紫雨に対する千世の疑念は日に日に増していった。


離縁状は手に入れた。

あとはこれを持って、どうにかして不破家へ戻らねば――。


千世は毎日、焦る気持ちに駆られていた。



――そんなある日。


「夕飯までには戻ってくる」

「いってらっしゃいませ」


用事で朝から帝都へと向かった紫雨。

夕方まで帰ってこない。


逃げ出すなら、――今日しかない。


千世は決心した。


「庭の掃き掃除をしてまいります」

「まあ、千世様!奥様にそんなことをさせるわけには…!」

「わたしがやりたいのです。お願いします…!」

「…そうですか?では、お言葉に甘えてお願いできますでしょうか」

「はい…!」


千世は使用人に伝えると、ほうきを持って庭へと出た。


そして、使用人の目を盗みながら、自分の部屋から荷物を持ち出し庭の茂みへと隠していく。