――それは、紫雨に首筋を噛まれること。


「お、おやめください…!」

「やめない。いいから、俺にすべてを預けろ」


千世がここへきた初夜から、紫雨は千世の首筋に愛おしそうに噛みついてきた。

おそらく生き血を吸っている。


噛まれるといってもなんら痛みはなく、ピリッとした電流が走ったような甘い疼きがあるくらい。

しかし、正彦という存在がいながら、違う男にこのように求められることに千世は嫌悪感を抱いていた。


初めこそ、全力で拒否していた千世。

だが、紫雨はこの行いだけは力ずくでもしてくるのだった。


そうして諦めた千世は、徐々に首筋に噛みつかれることを許していった。

無駄な抵抗をしないほうが早く済むと学習したからだ。


――しかし。

毎晩のこの行いは、はたしてなんのために…?