「見せてみろっ」


紫雨は千世のケガをした指を労るように、そっと自分の右手の中へ包みこんだ。

そして、その紫雨の右手の甲に麻の葉模様のようなアザが浮かび上がる。


すると、ぼんやりとした温かい光が紫雨の手の中からもれ出て、紫雨が手を離すと千世の指の切り傷が跡形もなく消え去っていた。


「これくらいの傷ならすぐ治せるから、またなにかあったら遠慮なく言え」

「あ…、ありがとうございます」


紫雨の背中にそうつぶやく千世。


今のも、鬼の妖術の一種だった。

どうやら鬼には、妖術を使う際に手の甲にアザのような模様が浮かび上がるのが特徴のよう。


すぐさま傷を治し、気にかけてくれる紫雨。


――正彦も同じだった。

千世がちょっとした傷をつくっただけで、大げさに心配した。


正彦のことを想い、瞳が潤む千世。