千世は台所で、大根の葉を包丁で細かく刻む。


『なにかしていないと落ち着かない』というのは、千世の本音だった。


これまで不破家の使用人として毎日慌ただしく業務をこなしてきというのに今さらゆっくりしていろと言われてもなにをしていいかわからない。

こうして、食事の支度や掃除をしているほうが千世は気が楽だった。


それにこの屋敷は、紫雨含め仕えている使用人もみな鬼。

一応は陽の鬼であるから危害を加えてこないとはいえ、鬼に対する恐怖心は完全には拭えず、なにかしていないと気が紛れないのであった。


そんなことを考えていたら――。


「……痛っ…!」


包丁で指を切ってしまった千世。

左手の人差し指からは血が流れる。


普段なら、こんなヘマはしないのに…。


すると、紫雨がやってくる。