「千世!」


千世が廊下の窓拭きをしていると、正彦がやってきた。


「正彦さん!どうされたのですか?」

「ちょっといいものが手に入ったから、千世に渡そうと思って」

「いいもの…?」


首をかしげる千世。

正彦は、千世にあるものを握らせた。


千世が手を開けると、そこには白く曇った紙に包まれた四角い小さなものが2つ――。


「これは…、キャラメル!?」


目を丸くして驚く千世。


「さっき、会社の取引先の人にもらったんだ。せっかくだし、千世にと思って」

「…ありがとうございます!うれしいです」

「他のみんなには秘密なっ。バレないように、今食べてしまったらいいよ」


正彦は、口元に人さし指を立てて微笑む。

すると千世は、2つあるキャラメルのうち1つを正彦へ差し出した。