――どうしてこんなことに。


千世は毎日のように思っていた。



というのも、千世が紫雨に離縁を申し出にきてかれこれ10日。

なぜか千世は、叢雲家の屋敷で紫雨といっしょに暮らしていた。


千世が離縁状を受け取り、帰ろうとしたあのとき――。


『返してやるものか。お前は、俺が待ち望んでいた花嫁だ』


初めて会ったばかりの夫である紫雨に抱きしめられた千世。


紫雨には6人の鬼の妻と、23人もの名前貸しで婚姻を結んだ人間の妻がいたが、そのすべてと婚姻を解消した。

鬼の妻たちとは口約束での夫婦関係だったためその場で屋敷から追い払い、婚姻状をへて結んだ人間の妻たちには一方的に離縁状を送りつけた。


紫雨は、自身に利益のある家柄の妻たちとも縁を切り、千世をただ1人の妻と決めたのだった。