「そうかもしれませんが…、相手方が戸籍を重んじるお家柄でして…。わたしの戸籍に叢雲様のお名前があると…その……」

「わかったわかった。とりあえず、一筆書けばいいんだな?」

「…はい!よろしくお願いします」


紫雨は、筆を滑られせるようにして離縁状に自分の名前を記入した。


「これでいいのか?」

「ありがとうございます…!」


そこにはたしかに、離縁を求めることに合意したと紫雨と千世の名前が明記されていた。

あとはこれを不破家へ持ち帰ればいいだけ。


「用が済んだなら帰ってくれるか?人間が我が屋敷にいると思うと、どうにも落ち着かん」

「は…はい!すぐにっ…」


千世は慌てて身支度を整える。


人間嫌いという噂は本当のようだ。

しかし、それにしては話しやすい印象を覚えた千世だった。