千世はごくりとつばを飲む。


――恐ろしくて、本心としてはこんなこと申し出たくはない。

しかし、正彦と結婚するためにはこうするしか――。


「わ…わたしくと、離縁していただきたくまいりました」


震える声。

千世は深々と頭を下げる。


声だけでなく、勝手に体もカタカタと震えだす。


紫雨がどのような表情をしているのかがこわくて見れない千世は、顔を上げることもできない。


――すると。


「わかった」


そんな声が聞こえて、千世ははっとして顔を上げる。


「…よ、よろしいのですか!?」

「よろしいもなにも、お前がそうしたいのだろう?名ばかりの妻が1人減ったところで、なんとも思わん」


まさかこんなあっさり話が進むとは思っておらず、驚く千世。


「ありがとうございます…!」