長い廊下を奥へ奥へと進み、連れてこられた場所は母屋から渡り廊下を挟んだ離れ。


「ヤダ〜!紫雨ったら!」

「紫雨様、ご冗談もほどほどに〜」


近づくに連れ、女たちの陽気な声が聞こえてくる。

しかも、1人や2人ではない。


千世が、開けっ放しの障子から顔をのぞかせて見えたのは、何人もの女に囲まれた男の姿――。


襟足の長い黒髪の短髪に、鼻筋の通った整った顔。

さらに特徴的なのは、白い肌によく映える紫水晶を埋め込んだかのような美しい瞳。


――これが、鬼。


千世は思わず、その姿に一瞬見入ってしまった。


両手に花の如く、その男の両脇には複数の妖艶な美女たちが並んでいた。


「失礼致します。大庭千世様が旦那様にお会いしたいと、遠路はるばるお越しになられました」


床に頭をつける使用人のあとに、千世も慌てて膝をつくと深々と頭を下げた。