『その"役割"はオレだけであれ、そう祈った。』
オレにはその"役割"が出来ると思った。弥太郎もやっていたのなら、オレだって。オレが変わったって、これからもあいつらとは普通に過ごすんだと、そう思っていた。実は怖がりなあいつが、泣き虫なあいつが、瑞桃を守ることに選ばれるなんて思ってもいなかった。
オレは、じいちゃん似らしい。弥太兄もだ。これは顔とかより雰囲気…纏ってるオーラ的な意味合いらしい。じいちゃんはオレが小さい頃から厳しくて、問答無用でオレに稽古をつけた。
「お前には何かを守らなければいけないときが来るはずだ。そのためにも鍛えなければならない。」
実際、幼馴染の朱音はいじめられっ子で、凛は泣き虫。そんな幼馴染を守るのがオレの役割だった。4年前、弥太兄が中学にあがったとき、弥太兄はこれまでより、もっとじいちゃんのところに通うようになった。大きくなって、鍛えなければいけない理由が増えたんだろう。そんな風に考えていた。そして、今日はオレの中学の入学式。
「ってことはオレもじいちゃんの稽古厳しくなんのかな〜。」
「厳しくなるというか……弥太郎は自分で通いに来てるんでしょ?」
「私、青山先生の稽古がこれ以上増えるの無理だよ〜。」
オレの独り言に朱音と凛が返す。相変わらず幼馴染3人でつるんでるオレらは、クラスも同じになったのだった。ここ数年で朱音は気が強くなったし、凛の泣き虫はほんのちょっっっとだけ、マシになった。まだまだオレが守らねーといけないんだろうけど。桜が舞い、凛の頭につく。オレは頭についた花弁をとってやった。凛が恥ずかしそうに笑うと、朱音も微笑んだ。この光景が中学でも続くんだろうな、オレはそう思った。
「君、ちょっといいか?」
男子生徒……眼鏡をかけた先輩らしき人がオレを呼ぶ。
「?うっす。」
この先輩に心当たりはないが、親戚がこの学校にいるため、知らない生徒に声をかけられても不思議ではない。弥太兄の知り合いだろうか。それか、オレが青山先生…じいちゃんの孫だと知っているなら、剣道部の勧誘もあり得る。
「わり、ちょっと行ってくる。」
「分かった。」
「いってらっしゃい〜。」
朱音と凛に一声かけて、先輩についていった。
「あの…なんすか?」
武道場の近くだ。やはり、剣道部の勧誘だろうか。静かなその場所についたとき、急に景色が変わった。
「⁉︎」
周りは森。滝が流れ、緑が生い茂る。
「やっぱり、次は君なのか。ぼくの次なのが、意外だけど。」
先輩が振り返る。片眉を下げて少し困った顔をしている……そうだ、この人は確か副生徒会長の清水先輩だ。
「ここは……?」
「弥太郎から話を聞いてないのか?……いや、これは言わない決まりなのか?」
「なぁ、あんた、副生徒会長だよな?弥太兄を知ってるのか?」
ん?と考え込んでいた副生徒会長はオレを見る。
「ぼくのこと、知ってたのか。あぁ、弥太郎とは知り合いだよ。」
「……なぁ、この状況と弥太兄って関係あるよな?」
「話が早くて助かるよ。」
副生徒会長が笑う。その後ろから滝が流れるような動きが見えた。目を凝らすとそれは滝ではなく……。
「えぇ⁉︎後ろ‼︎龍‼︎」
「お、来たか。」
未知の生物に動揺を隠しきれないオレとは違い、ふ、と笑う副生徒会長。
『加護の子、よく瑞桃を守った。』
「まだ頑張らせてもらうけど。一旦、区切りだね。」
「龍が話した…⁉︎」
オレが驚いているのに、副生徒会長は話し続ける。
「こいつは青龍。あやかしを退治する力を与える神獣だ。神獣の加護の力で瑞桃を守る、その役割に選ばれたぼくや弥太郎は四神と呼ばれ、その力で瑞桃を守った。4年に1度、加護を受け継ぐ者として選ばれる四神は、瑞桃の土地の中心であるこの学校、そして瑞桃を守る。その役割に、次は君が選ばれたってわけ。……まぁ、君には、加護を受けるか決める権利はあるよ?」
受けるだろうけど、とでも言いたげな顔をする副生徒会長。
「待って待って待って。情報が多いって!」
オレが言うと、副生徒会長は「それもそうか。」と一旦口を閉じた。
「『守らなければいけないときが来るはず』ってこれかよ……。」
じいちゃんの言葉を思い出す。
「あやかしって、小さい頃、じいちゃんが昔話みたいに聞かせてきたやつか…?」
「あやかしの話自体はある程度、聞いていたのか…。まぁそういうことだろうね。」
「あれが本当にいるわけ?」
「そういうことになるね。」
オレが独り言のように次々に質問するも、短い言葉で返す副生徒会長。オレはグシャグシャと自分の脳内を表すように頭をかいた。
「オレさ、朱音とか、凛を守んなきゃいけねーの。」
「噂の幼馴染さんたち、だね。」
弥太兄からどこまで聞いているんだか。副生徒会長はニコニコとオレの話を聞いた。
「瑞桃をまるごと守ってられるかよって言いてぇけど、結局、加護無しじゃ、あいつらを守れねぇとき出てくるわけ?」
「ん〜…まぁ……多分、そうなるね。」
ん〜……と副生徒会長は考えながら頷く。いつも見ている朱音と凛の顔が思い浮かんだ。オレは、あいつらを守れる存在でいたい。
「じゃ、やる。」
「お、いいね。決断が早い。」
「弥太兄もやってるんだろ?」
「弥太郎も即決だったらしいなぁ。」
あはは、と副生徒会長は人の良さそうな顔で笑った。
『決めたか?次の加護の子よ。』
「あぁ。宿星を受け入れるらしいよ。」
青龍の言葉に副生徒会長が返した。青龍は、鱗がキラキラしていて、まるで宝石のようだった。
「オレが加護を受ける。瑞桃を守ってやるよ。」
『承知した。加護を授けよう。』
青龍はゆっくり言葉を、唱える。
『瑞桃に現れし誰そ彼 汝に この力 授けよう 平穏を脅かす誰そ彼 この力強い輝きに解かされよ』
その瞬間、青龍が蒼色の光を纏う。生命力の塊のようなそれに、オレは両の手を伸ばした。何かに触れる。それを引き寄せた。
『頼んだぞ。』
青龍の声が聞こえ、景色が戻った。武道場の裏だ。
「!…おぉ、そうなるのか。」
副生徒会長はオレの手元を見て、少し驚いた顔をして、笑った。
「なぁ⁉︎」
オレの手元にはキラキラと青龍の鱗のように輝く刀が2振、握られていたのだった。
「龍哉⁉︎」
不意に声が聞こえた。慌てて刀を背中に隠し、声の方を振り返る。すると、朱音が走ってきた。朱音の後ろには弥太兄。
「龍哉っ!」
朱音が勢いよく、オレに抱きついた。
「な…⁉︎ななななな、なんだよ⁉︎」
あらま、と弥太兄がオレらをニヤニヤ見る。副生徒会長もおやおやとこちらを見ている。どんどん体温が上がるオレ。朱音はパッと体を離し、副生徒会長を見た。
「ねぇ、もしかして…龍哉も…?」
朱音がふわりと手を振ると手元に弓矢が握られていた。オレは握られた刀の冷たさを感じる。
「朱音が、加護を……?」
オレも手に握っている刀を見せた。
「龍哉もなのね!」
少しホッとした顔の朱音の後ろから、弥太兄がオレの手元を覗く。
「うはー!おれとじいちゃんの血を感じる〜!」
刀を見てケラケラと弥太兄が笑った。
「これはぼくの出る幕は無さそうだ。弥太郎頼んだよ。また後でね。」
「んだよ。忙しいな、副生徒会長さんは。」
「そう。忙しいんだよ。だから、適材適所。よろしくね。」
クスクスと笑いながら副生徒会長が立ち去る。弥太郎はオレたちに向き直った。
「じゃあ、着いて来いよ。」
弥太郎の後ろを歩く。オレは朱音をチラリと見た。朱音は少し不安げだが、ほっとした顔をしている。オレは手元の刀がずしりと重く感じた。オレは、オレ以外の2人は選ばれることがないと思っていた。こういうのは、オレの"役割"なんだから。オレの中で、守る対象だった幼馴染の何かが変わった気がして、少しモヤがかった気持ちになった。切り替えるために頭を少し振る。朱音が横に並ぶなら、オレも変わらなくてはいけない。オレたちの関係が変わる、加護の力よりもそのことが気になった。そして、オレたちの関係に変えたこの宿星にオレは少し怒りを覚えたのだった。
オレにはその"役割"が出来ると思った。弥太郎もやっていたのなら、オレだって。オレが変わったって、これからもあいつらとは普通に過ごすんだと、そう思っていた。実は怖がりなあいつが、泣き虫なあいつが、瑞桃を守ることに選ばれるなんて思ってもいなかった。
オレは、じいちゃん似らしい。弥太兄もだ。これは顔とかより雰囲気…纏ってるオーラ的な意味合いらしい。じいちゃんはオレが小さい頃から厳しくて、問答無用でオレに稽古をつけた。
「お前には何かを守らなければいけないときが来るはずだ。そのためにも鍛えなければならない。」
実際、幼馴染の朱音はいじめられっ子で、凛は泣き虫。そんな幼馴染を守るのがオレの役割だった。4年前、弥太兄が中学にあがったとき、弥太兄はこれまでより、もっとじいちゃんのところに通うようになった。大きくなって、鍛えなければいけない理由が増えたんだろう。そんな風に考えていた。そして、今日はオレの中学の入学式。
「ってことはオレもじいちゃんの稽古厳しくなんのかな〜。」
「厳しくなるというか……弥太郎は自分で通いに来てるんでしょ?」
「私、青山先生の稽古がこれ以上増えるの無理だよ〜。」
オレの独り言に朱音と凛が返す。相変わらず幼馴染3人でつるんでるオレらは、クラスも同じになったのだった。ここ数年で朱音は気が強くなったし、凛の泣き虫はほんのちょっっっとだけ、マシになった。まだまだオレが守らねーといけないんだろうけど。桜が舞い、凛の頭につく。オレは頭についた花弁をとってやった。凛が恥ずかしそうに笑うと、朱音も微笑んだ。この光景が中学でも続くんだろうな、オレはそう思った。
「君、ちょっといいか?」
男子生徒……眼鏡をかけた先輩らしき人がオレを呼ぶ。
「?うっす。」
この先輩に心当たりはないが、親戚がこの学校にいるため、知らない生徒に声をかけられても不思議ではない。弥太兄の知り合いだろうか。それか、オレが青山先生…じいちゃんの孫だと知っているなら、剣道部の勧誘もあり得る。
「わり、ちょっと行ってくる。」
「分かった。」
「いってらっしゃい〜。」
朱音と凛に一声かけて、先輩についていった。
「あの…なんすか?」
武道場の近くだ。やはり、剣道部の勧誘だろうか。静かなその場所についたとき、急に景色が変わった。
「⁉︎」
周りは森。滝が流れ、緑が生い茂る。
「やっぱり、次は君なのか。ぼくの次なのが、意外だけど。」
先輩が振り返る。片眉を下げて少し困った顔をしている……そうだ、この人は確か副生徒会長の清水先輩だ。
「ここは……?」
「弥太郎から話を聞いてないのか?……いや、これは言わない決まりなのか?」
「なぁ、あんた、副生徒会長だよな?弥太兄を知ってるのか?」
ん?と考え込んでいた副生徒会長はオレを見る。
「ぼくのこと、知ってたのか。あぁ、弥太郎とは知り合いだよ。」
「……なぁ、この状況と弥太兄って関係あるよな?」
「話が早くて助かるよ。」
副生徒会長が笑う。その後ろから滝が流れるような動きが見えた。目を凝らすとそれは滝ではなく……。
「えぇ⁉︎後ろ‼︎龍‼︎」
「お、来たか。」
未知の生物に動揺を隠しきれないオレとは違い、ふ、と笑う副生徒会長。
『加護の子、よく瑞桃を守った。』
「まだ頑張らせてもらうけど。一旦、区切りだね。」
「龍が話した…⁉︎」
オレが驚いているのに、副生徒会長は話し続ける。
「こいつは青龍。あやかしを退治する力を与える神獣だ。神獣の加護の力で瑞桃を守る、その役割に選ばれたぼくや弥太郎は四神と呼ばれ、その力で瑞桃を守った。4年に1度、加護を受け継ぐ者として選ばれる四神は、瑞桃の土地の中心であるこの学校、そして瑞桃を守る。その役割に、次は君が選ばれたってわけ。……まぁ、君には、加護を受けるか決める権利はあるよ?」
受けるだろうけど、とでも言いたげな顔をする副生徒会長。
「待って待って待って。情報が多いって!」
オレが言うと、副生徒会長は「それもそうか。」と一旦口を閉じた。
「『守らなければいけないときが来るはず』ってこれかよ……。」
じいちゃんの言葉を思い出す。
「あやかしって、小さい頃、じいちゃんが昔話みたいに聞かせてきたやつか…?」
「あやかしの話自体はある程度、聞いていたのか…。まぁそういうことだろうね。」
「あれが本当にいるわけ?」
「そういうことになるね。」
オレが独り言のように次々に質問するも、短い言葉で返す副生徒会長。オレはグシャグシャと自分の脳内を表すように頭をかいた。
「オレさ、朱音とか、凛を守んなきゃいけねーの。」
「噂の幼馴染さんたち、だね。」
弥太兄からどこまで聞いているんだか。副生徒会長はニコニコとオレの話を聞いた。
「瑞桃をまるごと守ってられるかよって言いてぇけど、結局、加護無しじゃ、あいつらを守れねぇとき出てくるわけ?」
「ん〜…まぁ……多分、そうなるね。」
ん〜……と副生徒会長は考えながら頷く。いつも見ている朱音と凛の顔が思い浮かんだ。オレは、あいつらを守れる存在でいたい。
「じゃ、やる。」
「お、いいね。決断が早い。」
「弥太兄もやってるんだろ?」
「弥太郎も即決だったらしいなぁ。」
あはは、と副生徒会長は人の良さそうな顔で笑った。
『決めたか?次の加護の子よ。』
「あぁ。宿星を受け入れるらしいよ。」
青龍の言葉に副生徒会長が返した。青龍は、鱗がキラキラしていて、まるで宝石のようだった。
「オレが加護を受ける。瑞桃を守ってやるよ。」
『承知した。加護を授けよう。』
青龍はゆっくり言葉を、唱える。
『瑞桃に現れし誰そ彼 汝に この力 授けよう 平穏を脅かす誰そ彼 この力強い輝きに解かされよ』
その瞬間、青龍が蒼色の光を纏う。生命力の塊のようなそれに、オレは両の手を伸ばした。何かに触れる。それを引き寄せた。
『頼んだぞ。』
青龍の声が聞こえ、景色が戻った。武道場の裏だ。
「!…おぉ、そうなるのか。」
副生徒会長はオレの手元を見て、少し驚いた顔をして、笑った。
「なぁ⁉︎」
オレの手元にはキラキラと青龍の鱗のように輝く刀が2振、握られていたのだった。
「龍哉⁉︎」
不意に声が聞こえた。慌てて刀を背中に隠し、声の方を振り返る。すると、朱音が走ってきた。朱音の後ろには弥太兄。
「龍哉っ!」
朱音が勢いよく、オレに抱きついた。
「な…⁉︎ななななな、なんだよ⁉︎」
あらま、と弥太兄がオレらをニヤニヤ見る。副生徒会長もおやおやとこちらを見ている。どんどん体温が上がるオレ。朱音はパッと体を離し、副生徒会長を見た。
「ねぇ、もしかして…龍哉も…?」
朱音がふわりと手を振ると手元に弓矢が握られていた。オレは握られた刀の冷たさを感じる。
「朱音が、加護を……?」
オレも手に握っている刀を見せた。
「龍哉もなのね!」
少しホッとした顔の朱音の後ろから、弥太兄がオレの手元を覗く。
「うはー!おれとじいちゃんの血を感じる〜!」
刀を見てケラケラと弥太兄が笑った。
「これはぼくの出る幕は無さそうだ。弥太郎頼んだよ。また後でね。」
「んだよ。忙しいな、副生徒会長さんは。」
「そう。忙しいんだよ。だから、適材適所。よろしくね。」
クスクスと笑いながら副生徒会長が立ち去る。弥太郎はオレたちに向き直った。
「じゃあ、着いて来いよ。」
弥太郎の後ろを歩く。オレは朱音をチラリと見た。朱音は少し不安げだが、ほっとした顔をしている。オレは手元の刀がずしりと重く感じた。オレは、オレ以外の2人は選ばれることがないと思っていた。こういうのは、オレの"役割"なんだから。オレの中で、守る対象だった幼馴染の何かが変わった気がして、少しモヤがかった気持ちになった。切り替えるために頭を少し振る。朱音が横に並ぶなら、オレも変わらなくてはいけない。オレたちの関係が変わる、加護の力よりもそのことが気になった。そして、オレたちの関係に変えたこの宿星にオレは少し怒りを覚えたのだった。



