「聞いてない‼︎」
学祭の日、白水くんの叫びが教室に響いた。
学祭当日。僕たちのクラスは、それはもう、うるさかった。
「あははは‼︎龍哉、似合うよ〜!」
「ふっ…まぁ、いいんじゃない?」
凛さんと朱音さんが涙を流して笑う。
「見てんじゃねー!笑うな‼︎」
龍哉くんが叫び、二人を追いかける。きゃ〜!と楽しそうに走り回る二人。ふわりと揺れるフリル。そう、龍哉くんはメイド服を着ていた。
「幼馴染組、楽しそうだな。」
「そうかな?」
田浦くんと僕は少し離れて、その様子を見ていた。同じくメイド服を着た本山くんが現れる。
「男女逆転★執事&メイド喫茶!頑張ろうな♡」
きゅるん!とポーズを決め、僕と田浦くんにウインクする本山くん。
「こっちは、ノリノリでえぐいな。」
「なんで本山くんはミニスカートなの…?」
龍哉くんがクラシカルなメイド服なのに、なぜか本山くんはミニスカメイド。田浦くんは少し青くなり、僕もあまり見ないようにする。
「凛さんたちは、似合うね。」
龍哉くんに追いかけられる二人に言うと、凛さんが駆け寄ってきた。
「でしょ!」
いかにもな執事をイメージしたような燕尾服。凛さんもだが、朱音さんが非常に似合う。いつものポニーテールが執事服にマッチしていて、きっちりとした雰囲気を出している。衣装担当のクラスメイトの女子が色めきだっていたわけだ。今も凛さんのネクタイを直している姿が、万能執事と執事見習いって感じ。
「休憩時間を何回か入れるから、その間に色んなところまわれるね〜。」
「リストもらってきたから、後から見ましょ。」
「これで、まわれっての?」
にこにこする凛さんとリストを取り出す朱音さん。ピラリとロングスカートの裾を掴む龍哉くん。
「あ!6年1組の劇見たい!」
「弥太郎のクラス、劇なんだ?」
僕がいうと、凛さんが、きょとんとした。
「ちょうど休憩時間だし、いいじゃない。」
朱音さんがリストに丸をつける。
「ほら、そろそろ始まるって。」
田浦くんに言われて、みんなで窓から校門を見る。大人数の人。学祭は、学外の人が来てもいいので賑わいそうだ。ホール組は教室の入口に行った。
「ん?」
ふわり。窓から何か入ってくる。それを手に取った。
「どうした?聖仁?」
田浦くんが僕の手元を見る。
「それ、カラスの羽?」
「窓から入ってきて…。」
「早く捨てて、一回手を洗ってきなね。」
田浦くんに言われて、外に羽を捨てる。
「ん…?」
羽は窓からふわりと落ち、ぼやりと姿を消した。気のせいかな?消えた羽は地面に落ちた様子はなく、幻のようだ。そんなザラリとした違和感は、教室で流し始めた楽しげな音楽に攫われていった。
「聞いてない‼︎」
もう一度、入口で叫ぶ白水くん。
「やめろ、晶。うるさいぞ。」
武くんが注意した。学祭が始まり、一番にうちのクラスに飛び込んできたのは、白水くん、そしてついてきた武くんだった。
「凛ちゃんのクラスが、執事メイド喫茶だって聞いたから来たんだけど⁉︎」
「その通りだろ?」
ピロっとスカートを持つ龍哉くん。
「誰得だよ⁉︎」
「好きな人は好きだからね。」
白水くんの叫びに、凛さんが言う。
「あっ⁈凛ちゃん‼︎執事服も可愛いね⁉︎」
「ふふふ、ありがとう〜。今から宣伝してくる〜!」
燕尾服をピロピロさせて喜ぶ凛さん。看板を持った朱音さんが、凛さんを連れて行く。
「ううぅ…メイド服、見たかった…。」
「意外と白水くんってこういうとこあるよね。欲に忠実というか。…ベタベタの定番?が好きと言うか。」
「黄野ならなんでもいいんだろうが、今回はメイド喫茶と知って、かなり浮かれてたからな。」
白水くんの落ち込む様子を見ながら、武くんと話す。
「お?白水じゃん!」
「うわ⁉︎本山、何その格好⁉︎」
「似合ってるだろ?」
本山くんが、白水くんにうふん♡とセクシーポーズで投げキッスする。武くんはその様子にドン引きだった。
「ごめん。出直す。凛ちゃんがホール担当で、本山のいない時間にもう一回来るね。」
廊下に向き直る白水くん。長い足で逃げようとするが、本山くんの反応は早かった。
「まぁまぁ、ゆっくりしてけよ!白水!かわいいおれが給仕してやるから!おかえりなさいませ、ご主人様〜♡」
「本山⁉︎うわ‼︎ちょ、やめてよ!」
「諦めろよ。はーい!ご主人様2名、ご来店でーす!」
「青山ぁぁぁあ‼︎」
本山くんが、白水くんの腕を無理矢理組む。逃げようとする白水くんに、龍哉くんが反対側の腕も組んだ。悲鳴をあげながら教室内に連れ込まれる白水くん。その様子に、僕はメイド喫茶よりもお化け屋敷を連想した。
「武くん。おかえりなさいませ?」
僕が声をかけると、武くんは諦めたような顔をして、ため息をついた。
「朝イチからこれか…。聖仁、エナジードリンクと胃薬、注文できるか?」
「先行き不安なところ申し訳ないけど、喫茶店メニューに絶対ないやつだよ。それ。」
飲み合わせも絶対良くないし。白水くんの悲鳴が聞こえる教室。賑わい始めた廊下。今日の苦労を考えて、僕と武くんは、同時にため息をついたのだった。
「田浦くん、パフェの盛り方上手いね!」
「聖仁、紅茶淹れるの、手際いいな。」
悲鳴のあがるホールと違い、穏やかなキッチン。キッチンといっても、教室内で作れるものでないといけないから、サンドイッチやパフェ、クッキーやスコーン、紅茶などがメインだ。紅茶の淹れ方については、白水くんにコツを聞いていたのでバッチリ。まだ混み合ってもいないので、白水くんと武くんの様子を見る。
「白水、絵になるなぁ…。」
田浦くんがつぶやく。僕は頷いた。スコーンにジャムを塗り、食べる姿はまるで貴族のアフタヌーンティーだ。その周りに奇妙なメイド、男前なメイド、そして意外にもパフェを食べている真顔の武くんを除けば。
「白水、スコーンに、萌え萌えきゅん、いるか?」
「味変わりそうでやだよ。」
本山くんに執拗に絡まれる白水くん。意外と彼らは仲が良いのでは?白水くんと武くんは、食事が終わり、席を立つ。二人とも、なんだか疲れた顔をしていた。可哀想に…。僕はそう思いながら、キッチンに戻り、サンドイッチを作る。
「戻ったよ〜。」
白水くんたちと入れかわるように、凛さんと朱音さんが戻ってきた。
「なんで来てんだよ‼︎」
龍哉くんの叫び声が聞こえたので、ホールを見ると、凛さんたちが、お客様を五人も連れて帰ってきていた。
「弥太郎と碧ちゃんは午後から劇だし。かづ先輩と美宇さんは展示系だから、ほぼ自由で〜。…あと平賀さんは元々廊下でずっと見てたみたいだけど。」
「嘘だろ⁉︎」
頭を抱える龍哉くん。
「普段の青山先輩とは違うお姿…!目に焼き付けておこうと思って…!これはこれで似合うんやね…!」
うっとりとする平賀さん。かづ生徒会長と美宇さんはにこにこしているし、弥太郎先輩と碧ちゃん先輩はニヤニヤしている。
「龍哉、似合うじゃないの〜。」
「似合いたくねぇよ!」
碧ちゃん先輩は、勝手に座席を決め、ご機嫌にテーブルに座る。
「碧は朱音がメイド服着せられると思って焦ってたから、執事服で安心してんだよ。」
同じテーブルに弥太郎先輩が座った。
「白水と黒岩はもう来たのか?」
「さっき、来てましたよ。」
かづ先輩の質問に、少しキッチンから顔を出し、僕が答える。
「あれ?聖仁くんはメイド服着ないの?」
美宇さんが聞いてくるので、曖昧に微笑んでおく。メイド服を否定すると龍哉くんが可哀想だからだ。キッチンに戻りながら、別席を見ると、平賀さんは、教室の端のテーブルに座っていた。うっとりと龍哉くんを見ながら、メニューを適当に指差して注文をしているようだけど大丈夫かな?せっせと凛さんが注文をメモしている。
「あ、あと青山先輩に、一番高いドリンクを…」
「そういうお店じゃないよ〜。」
平賀さんの注文に、淡々と返事する凛さん。凛さんは、ピッとメモを千切って田浦くんに渡すと、かづ生徒会長のところに飛んで行った。
「かづせんぱ〜…」
「あら!凛ちゃん、かわいい〜!似合うわね!こっちおいで〜!」
「ぷぎゃ!」
かづ生徒会長の近くに行った瞬間に、美宇さんに抱きしめられる凛さん。かづ生徒会長一直線だったのに、美宇さんに引っ張られてむぎゅむぎゅと抱きしめられる。
「ちょ!美宇さん!」
「ちょっとだけ!満足したら離すから…!」
朱音さんが、凛さんを救出しようとするも、美宇さんが抱きしめる力を強める。
「美宇さん、別料金取るよ。」
「どんな店だよ。」
龍哉くんの一言に、弥太郎先輩が反応する。ホール担当たちが仕事にならないので、僕は紅茶を淹れて、テーブルに持って行った。
「お、四方。ありがとう。学祭、楽しめてるか?」
かづ生徒会長に声をかけられる。僕はテーブルに紅茶を置きながら、悩んだ。
「まだ始まったばかりだけど、想像の5倍は騒がしいです。」
「そうだな。」
かづ生徒会長は、同じテーブルに座るメンバーを見て、頷いた。頑なに凛さんを離さない美宇さん。引き剥がそうとする朱音さんに、そんな朱音さんの写真を撮る碧ちゃん先輩。弥太郎先輩も龍哉くんの写真を撮ろうとして、龍哉くんが、そのスマホを奪おうと必死だ。
「…まぁ、楽しめたらいいな。」
「………。」
かづ生徒会長の言葉に、僕はなんとも言えない気持ちになるのだった。
学祭の日、白水くんの叫びが教室に響いた。
学祭当日。僕たちのクラスは、それはもう、うるさかった。
「あははは‼︎龍哉、似合うよ〜!」
「ふっ…まぁ、いいんじゃない?」
凛さんと朱音さんが涙を流して笑う。
「見てんじゃねー!笑うな‼︎」
龍哉くんが叫び、二人を追いかける。きゃ〜!と楽しそうに走り回る二人。ふわりと揺れるフリル。そう、龍哉くんはメイド服を着ていた。
「幼馴染組、楽しそうだな。」
「そうかな?」
田浦くんと僕は少し離れて、その様子を見ていた。同じくメイド服を着た本山くんが現れる。
「男女逆転★執事&メイド喫茶!頑張ろうな♡」
きゅるん!とポーズを決め、僕と田浦くんにウインクする本山くん。
「こっちは、ノリノリでえぐいな。」
「なんで本山くんはミニスカートなの…?」
龍哉くんがクラシカルなメイド服なのに、なぜか本山くんはミニスカメイド。田浦くんは少し青くなり、僕もあまり見ないようにする。
「凛さんたちは、似合うね。」
龍哉くんに追いかけられる二人に言うと、凛さんが駆け寄ってきた。
「でしょ!」
いかにもな執事をイメージしたような燕尾服。凛さんもだが、朱音さんが非常に似合う。いつものポニーテールが執事服にマッチしていて、きっちりとした雰囲気を出している。衣装担当のクラスメイトの女子が色めきだっていたわけだ。今も凛さんのネクタイを直している姿が、万能執事と執事見習いって感じ。
「休憩時間を何回か入れるから、その間に色んなところまわれるね〜。」
「リストもらってきたから、後から見ましょ。」
「これで、まわれっての?」
にこにこする凛さんとリストを取り出す朱音さん。ピラリとロングスカートの裾を掴む龍哉くん。
「あ!6年1組の劇見たい!」
「弥太郎のクラス、劇なんだ?」
僕がいうと、凛さんが、きょとんとした。
「ちょうど休憩時間だし、いいじゃない。」
朱音さんがリストに丸をつける。
「ほら、そろそろ始まるって。」
田浦くんに言われて、みんなで窓から校門を見る。大人数の人。学祭は、学外の人が来てもいいので賑わいそうだ。ホール組は教室の入口に行った。
「ん?」
ふわり。窓から何か入ってくる。それを手に取った。
「どうした?聖仁?」
田浦くんが僕の手元を見る。
「それ、カラスの羽?」
「窓から入ってきて…。」
「早く捨てて、一回手を洗ってきなね。」
田浦くんに言われて、外に羽を捨てる。
「ん…?」
羽は窓からふわりと落ち、ぼやりと姿を消した。気のせいかな?消えた羽は地面に落ちた様子はなく、幻のようだ。そんなザラリとした違和感は、教室で流し始めた楽しげな音楽に攫われていった。
「聞いてない‼︎」
もう一度、入口で叫ぶ白水くん。
「やめろ、晶。うるさいぞ。」
武くんが注意した。学祭が始まり、一番にうちのクラスに飛び込んできたのは、白水くん、そしてついてきた武くんだった。
「凛ちゃんのクラスが、執事メイド喫茶だって聞いたから来たんだけど⁉︎」
「その通りだろ?」
ピロっとスカートを持つ龍哉くん。
「誰得だよ⁉︎」
「好きな人は好きだからね。」
白水くんの叫びに、凛さんが言う。
「あっ⁈凛ちゃん‼︎執事服も可愛いね⁉︎」
「ふふふ、ありがとう〜。今から宣伝してくる〜!」
燕尾服をピロピロさせて喜ぶ凛さん。看板を持った朱音さんが、凛さんを連れて行く。
「ううぅ…メイド服、見たかった…。」
「意外と白水くんってこういうとこあるよね。欲に忠実というか。…ベタベタの定番?が好きと言うか。」
「黄野ならなんでもいいんだろうが、今回はメイド喫茶と知って、かなり浮かれてたからな。」
白水くんの落ち込む様子を見ながら、武くんと話す。
「お?白水じゃん!」
「うわ⁉︎本山、何その格好⁉︎」
「似合ってるだろ?」
本山くんが、白水くんにうふん♡とセクシーポーズで投げキッスする。武くんはその様子にドン引きだった。
「ごめん。出直す。凛ちゃんがホール担当で、本山のいない時間にもう一回来るね。」
廊下に向き直る白水くん。長い足で逃げようとするが、本山くんの反応は早かった。
「まぁまぁ、ゆっくりしてけよ!白水!かわいいおれが給仕してやるから!おかえりなさいませ、ご主人様〜♡」
「本山⁉︎うわ‼︎ちょ、やめてよ!」
「諦めろよ。はーい!ご主人様2名、ご来店でーす!」
「青山ぁぁぁあ‼︎」
本山くんが、白水くんの腕を無理矢理組む。逃げようとする白水くんに、龍哉くんが反対側の腕も組んだ。悲鳴をあげながら教室内に連れ込まれる白水くん。その様子に、僕はメイド喫茶よりもお化け屋敷を連想した。
「武くん。おかえりなさいませ?」
僕が声をかけると、武くんは諦めたような顔をして、ため息をついた。
「朝イチからこれか…。聖仁、エナジードリンクと胃薬、注文できるか?」
「先行き不安なところ申し訳ないけど、喫茶店メニューに絶対ないやつだよ。それ。」
飲み合わせも絶対良くないし。白水くんの悲鳴が聞こえる教室。賑わい始めた廊下。今日の苦労を考えて、僕と武くんは、同時にため息をついたのだった。
「田浦くん、パフェの盛り方上手いね!」
「聖仁、紅茶淹れるの、手際いいな。」
悲鳴のあがるホールと違い、穏やかなキッチン。キッチンといっても、教室内で作れるものでないといけないから、サンドイッチやパフェ、クッキーやスコーン、紅茶などがメインだ。紅茶の淹れ方については、白水くんにコツを聞いていたのでバッチリ。まだ混み合ってもいないので、白水くんと武くんの様子を見る。
「白水、絵になるなぁ…。」
田浦くんがつぶやく。僕は頷いた。スコーンにジャムを塗り、食べる姿はまるで貴族のアフタヌーンティーだ。その周りに奇妙なメイド、男前なメイド、そして意外にもパフェを食べている真顔の武くんを除けば。
「白水、スコーンに、萌え萌えきゅん、いるか?」
「味変わりそうでやだよ。」
本山くんに執拗に絡まれる白水くん。意外と彼らは仲が良いのでは?白水くんと武くんは、食事が終わり、席を立つ。二人とも、なんだか疲れた顔をしていた。可哀想に…。僕はそう思いながら、キッチンに戻り、サンドイッチを作る。
「戻ったよ〜。」
白水くんたちと入れかわるように、凛さんと朱音さんが戻ってきた。
「なんで来てんだよ‼︎」
龍哉くんの叫び声が聞こえたので、ホールを見ると、凛さんたちが、お客様を五人も連れて帰ってきていた。
「弥太郎と碧ちゃんは午後から劇だし。かづ先輩と美宇さんは展示系だから、ほぼ自由で〜。…あと平賀さんは元々廊下でずっと見てたみたいだけど。」
「嘘だろ⁉︎」
頭を抱える龍哉くん。
「普段の青山先輩とは違うお姿…!目に焼き付けておこうと思って…!これはこれで似合うんやね…!」
うっとりとする平賀さん。かづ生徒会長と美宇さんはにこにこしているし、弥太郎先輩と碧ちゃん先輩はニヤニヤしている。
「龍哉、似合うじゃないの〜。」
「似合いたくねぇよ!」
碧ちゃん先輩は、勝手に座席を決め、ご機嫌にテーブルに座る。
「碧は朱音がメイド服着せられると思って焦ってたから、執事服で安心してんだよ。」
同じテーブルに弥太郎先輩が座った。
「白水と黒岩はもう来たのか?」
「さっき、来てましたよ。」
かづ先輩の質問に、少しキッチンから顔を出し、僕が答える。
「あれ?聖仁くんはメイド服着ないの?」
美宇さんが聞いてくるので、曖昧に微笑んでおく。メイド服を否定すると龍哉くんが可哀想だからだ。キッチンに戻りながら、別席を見ると、平賀さんは、教室の端のテーブルに座っていた。うっとりと龍哉くんを見ながら、メニューを適当に指差して注文をしているようだけど大丈夫かな?せっせと凛さんが注文をメモしている。
「あ、あと青山先輩に、一番高いドリンクを…」
「そういうお店じゃないよ〜。」
平賀さんの注文に、淡々と返事する凛さん。凛さんは、ピッとメモを千切って田浦くんに渡すと、かづ生徒会長のところに飛んで行った。
「かづせんぱ〜…」
「あら!凛ちゃん、かわいい〜!似合うわね!こっちおいで〜!」
「ぷぎゃ!」
かづ生徒会長の近くに行った瞬間に、美宇さんに抱きしめられる凛さん。かづ生徒会長一直線だったのに、美宇さんに引っ張られてむぎゅむぎゅと抱きしめられる。
「ちょ!美宇さん!」
「ちょっとだけ!満足したら離すから…!」
朱音さんが、凛さんを救出しようとするも、美宇さんが抱きしめる力を強める。
「美宇さん、別料金取るよ。」
「どんな店だよ。」
龍哉くんの一言に、弥太郎先輩が反応する。ホール担当たちが仕事にならないので、僕は紅茶を淹れて、テーブルに持って行った。
「お、四方。ありがとう。学祭、楽しめてるか?」
かづ生徒会長に声をかけられる。僕はテーブルに紅茶を置きながら、悩んだ。
「まだ始まったばかりだけど、想像の5倍は騒がしいです。」
「そうだな。」
かづ生徒会長は、同じテーブルに座るメンバーを見て、頷いた。頑なに凛さんを離さない美宇さん。引き剥がそうとする朱音さんに、そんな朱音さんの写真を撮る碧ちゃん先輩。弥太郎先輩も龍哉くんの写真を撮ろうとして、龍哉くんが、そのスマホを奪おうと必死だ。
「…まぁ、楽しめたらいいな。」
「………。」
かづ生徒会長の言葉に、僕はなんとも言えない気持ちになるのだった。



