2022年、8月3日
バイト先の先輩に告白された。

その先輩は大学3年生で大人っぽい雰囲気、髪の毛を手入れしているのが分かるくらい艶々な長髪を靡かせている女性だった。バイト上の関係で先輩はフロアで接客を、僕はキッチンで料理をしていた。注文が流れてきて作って、フロアの人に渡して持っていってもらうという共同作業みたいなところもあったからか関係度は日に日に満ちていくのを感じていた。そんな中での告白だったので”まぁ、こんなこともあるよな”が告白された時の第一印象だった。

同じ時間、バイトを上がり、一つの従業員部屋に行く。先輩はまかないの定食を食べて何か動画を見ていたのを覚えている。僕はその光景を見ながら”その定食作ったの僕じゃん”と思い、「美味しいですか?」と尋ねた。先輩は無邪気な笑顔で「めっちゃね。食べる?」と箸で肉を掴んで食べさせようとしてきた。僕は「食べてください。愛込めました」なんて笑いながら言ってみると、先輩も笑いながら、「愛感じるわ」と言ってくる。よかったと思い、僕は私服に着替えるため更衣室でゴソゴソと着替えていた。その時、先輩が「この後なんかあるの?」と尋ねてきた。僕は「ないですけど。」と答えると「ならさ、花火しない?私の家にあるんだけど」と遊びに誘われたので行くことにした。「いいですよ。でも、ゆっくり食べてください。喉に詰まると危ないのでね」とクスッと笑いながら僕が冗談まじりに言った。

そして、先輩は食べ終わり「花火取りに行こうか」と言い、一緒にバイト先を出て先輩の家へ向かう。その道中もずっと、学校の話をしていた。「大学3年生って何してるんですか?」とか「サークルのおすすめとかあるんですか?」とか基本的に僕が、質問ばかりしていた。が、先輩の家はバイト先から近くすぐに着いてしまい話は一旦終わった。先輩は「待ってて、すぐ来る」と言い、家の中へ入っていった。

僕は家の前にあった草むらに隠れて先輩を脅かしてやろうかと考えていた。が、想像以上に早く出てきたので隠れきれてないまま見つかってしまった。先輩は「何してるの?隠れるつもり?」と僕の姿を見て笑いながらそう言った。「なんでもないです。花火しましょう」と言い、顔が赤くなるのを実感していた。先輩の家の前でひっそりと数本の花火に火をつけていく。ただただ火を出して燃えゆく棒を眺め、僕と先輩は感傷に浸っていた。そして、あと線香花火だけということになりよくある”どちらが長く続けられるか”という勝負になる。「よっしゃー」と言い、僕も先輩も線香花火に火をつけた。

その時、先輩が「ねぇ、付き合わない?」と言ってきたのだった。

僕は何も言えない。ただ現実ではない何かに襲われている感覚だけしていた。「ん?」と聞き返す僕に「だから、付き合わない?って」と少し強調して言ってくる先輩。僕はこのとき、先輩のことを好きではなかった。

今、先輩は笑顔で線香花火を見ている。
僕への告白に対する答えも待っている。

・・・・・・

花火も先輩の笑顔も、いつかは散る。僕がここで振ってしまえば先輩の笑顔も、無くなるのだろうか。

この先は覚えていない。僕が出した答えを書きたくない。でも先輩は笑顔のままだった。ただそれだけは、読む人に伝えておこうと思う。