式は地元の結婚式場で行われた。
式は滞りなく進んでいった。
まさに感動モノだった。
俺が引き取った時はあんなに小さかったのに、今ではこんなに大きく、可愛くなって……。
そんなおじさんみたいなことを考えていると式の時間はあっという間に流れて行った。
そろそろ式もお開きという頃、司会者が出てきて壇上へ立った。
「それでは新婦様よりサプライズです」
盛大な拍手に迎えられ幸子はマイクを握った。
サプライズ?俺は何も聞いていなかったから混乱してしまった。一体誰に向けて……。
「おじさんへ」
そう、幸子は話し始めた。
俺は名前が呼ばれ体が強ばってしまった。
「私を引き取ってから今までずっと育ててくれてありがとう。私はおじさんの優しさに何度も救われてきました。今日はおじさんのお母さんとの約束についてお話させてください」
俺の母さんとの?
確か、元々幸子は母さんが引き取る予定だった。
その関係でもしかしたら幸子と母さんはお互いに認識があったのかもしれない。
「私はおじさんに引き取られる前におじさんのお母さんと一度話したことがありました。その時にお願いされたんです。『慶次は優しいけど育った環境のせいできっと、どこか心にガタがきてると思う。だから幸子ちゃんが慶次のことを助けてあげて。お互いがお互いの支えになって幸せに生きて欲しい』って」
全てが繋がった気がした。
母さんは幸子を自分で育てるつもりで引き取ったのではなかったのだ。
俺と幸子を引き合わすため。
俺たちの出会いは母さんによって仕組まれていたのだ。
そして、幸子も母さんのその言葉があったから俺に「涙を流させてみせる」と言ったのだ。
「でも、そんなこと抜きにして、おじさんは私を精一杯今まで育ててきてくれた。幸せを知らなかった私をここまで連れてきてくれた」
違うよ。それは俺のおかげじゃない。君の努力の成果だ。胸を張ってくれ。
「今まで泣かせることは出来なかったけど。おじさんは私にとって代わりなんて効かない、最高のお父さんです。今までありがとうお父さん」
鼻声で、所々途切れてしまう幸子のスピーチに俺は思わず天を仰いだ。
久しぶりの感覚だった。感情の昂りで涙が零れ落ちそうになるなんて。
幸子はこんな俺の姿を見てどう思うだろうか。
かっこ悪いと思うかな。いや、やっと目標を達成したとガッツポーズをしているだろうか。
なんでもいいや。幸子が幸せならそれでいい。
俺はおもむろに席から立ち上がり、幸子の元へ向かい抱きしめた。
「ありがとうはこっちのセリフだ」
涙で顔がぐちゃぐちゃになりそうな幸子を目一杯抱きしめたあと、新郎の方に向き直った。
きっと今の俺の顔はみっともないことになっているんだろうな、と思った。でも、どうしても伝えておきたかった。
「幸子を頼みます」
新郎は俺の手を取り、目を見つめ返してから「絶対に幸せにします」と言い、俺たちは固い握手を結んだ。
会場からは暖かい拍手が送られた。
俺は(あぁ、なんて幸せな時間だろうか)と感じた。
俺はきっとこの時間を生涯忘れることはないだろうと思うのだった。
式は滞りなく進んでいった。
まさに感動モノだった。
俺が引き取った時はあんなに小さかったのに、今ではこんなに大きく、可愛くなって……。
そんなおじさんみたいなことを考えていると式の時間はあっという間に流れて行った。
そろそろ式もお開きという頃、司会者が出てきて壇上へ立った。
「それでは新婦様よりサプライズです」
盛大な拍手に迎えられ幸子はマイクを握った。
サプライズ?俺は何も聞いていなかったから混乱してしまった。一体誰に向けて……。
「おじさんへ」
そう、幸子は話し始めた。
俺は名前が呼ばれ体が強ばってしまった。
「私を引き取ってから今までずっと育ててくれてありがとう。私はおじさんの優しさに何度も救われてきました。今日はおじさんのお母さんとの約束についてお話させてください」
俺の母さんとの?
確か、元々幸子は母さんが引き取る予定だった。
その関係でもしかしたら幸子と母さんはお互いに認識があったのかもしれない。
「私はおじさんに引き取られる前におじさんのお母さんと一度話したことがありました。その時にお願いされたんです。『慶次は優しいけど育った環境のせいできっと、どこか心にガタがきてると思う。だから幸子ちゃんが慶次のことを助けてあげて。お互いがお互いの支えになって幸せに生きて欲しい』って」
全てが繋がった気がした。
母さんは幸子を自分で育てるつもりで引き取ったのではなかったのだ。
俺と幸子を引き合わすため。
俺たちの出会いは母さんによって仕組まれていたのだ。
そして、幸子も母さんのその言葉があったから俺に「涙を流させてみせる」と言ったのだ。
「でも、そんなこと抜きにして、おじさんは私を精一杯今まで育ててきてくれた。幸せを知らなかった私をここまで連れてきてくれた」
違うよ。それは俺のおかげじゃない。君の努力の成果だ。胸を張ってくれ。
「今まで泣かせることは出来なかったけど。おじさんは私にとって代わりなんて効かない、最高のお父さんです。今までありがとうお父さん」
鼻声で、所々途切れてしまう幸子のスピーチに俺は思わず天を仰いだ。
久しぶりの感覚だった。感情の昂りで涙が零れ落ちそうになるなんて。
幸子はこんな俺の姿を見てどう思うだろうか。
かっこ悪いと思うかな。いや、やっと目標を達成したとガッツポーズをしているだろうか。
なんでもいいや。幸子が幸せならそれでいい。
俺はおもむろに席から立ち上がり、幸子の元へ向かい抱きしめた。
「ありがとうはこっちのセリフだ」
涙で顔がぐちゃぐちゃになりそうな幸子を目一杯抱きしめたあと、新郎の方に向き直った。
きっと今の俺の顔はみっともないことになっているんだろうな、と思った。でも、どうしても伝えておきたかった。
「幸子を頼みます」
新郎は俺の手を取り、目を見つめ返してから「絶対に幸せにします」と言い、俺たちは固い握手を結んだ。
会場からは暖かい拍手が送られた。
俺は(あぁ、なんて幸せな時間だろうか)と感じた。
俺はきっとこの時間を生涯忘れることはないだろうと思うのだった。