「春光様。
これは例えば、という話ですよ」

さすがに私が可哀想だと思ったのか、威宗が助け船を出してくれた。

「えー。
でも、光子様が間違えるとか絶対にないし。
威宗だって花恵様が間違えるとかないと思ってるでしょ?」

唇を尖らせて不満げに春光は足をぶらぶらさせている。

「それはそうですが。
でも翠様は光子様が間違えたら、春光様がどうするのか聞きたいのですよ」

威宗が春光を諭す。
しかし見た目が子供で偉そうな春光と、そんな春光に丁寧な態度を取る大男の威宗は子供主人と執事のようだ。

「もしもの話でもないものはないの。
威宗だったらどう答えるんだよ?」

「そうですね……」

春光に問われ、軽く握った拳を顎に当てて威宗が悩み出す。
もし、春光と同じ答えだったら、もうこれはそういうものなのだと諦めよう。

「投げ出さずにお諫めいたしますね。
花恵様はきっとわかってくださると思いますし、私は花恵様を信じておりますから」

柔らかく微笑んだ威宗からは、祖母に対する信頼が溢れていた。
それが、酷く羨ましい。

「……だ、そうですよ。
翠様。