昨晩のあれはきっと、伶龍だったと思う。
でも、なんで私の病室に、しかも忍び込むように来たのだろう。
私が死んだのか確かめに来たとか?
無事な私を見て、なにを考えていたのだろう。

「翠、様?」

長く私が黙っていたからか、春光が心配そうに顔をのぞき込む。

「怪我が痛むのですか?」

「あ、ううん。
大丈夫だよ」

安心させるように笑って返す。
伶龍の気持ちなんて、私が考えたところでわからない。

「春光。
あの、さ?
もし、もしもだよ?
大ばあちゃんがなにか間違いを犯したとして。
それでやってられるか!とかなったらどうする?」

ちら、ちらっと春光の顔をうかがう。
彼はなにを聞かれているのか理解できないのか、何度か瞬きをした。
威宗は私の意図がわかっているのか、さりげなく聞き耳を立てているようだ。

「光子様が間違いを犯すなど、ありえませんが」

「あー、そーだねー」

不思議そうに答えられ、がっくりと肩が落ちる。
うん、曾祖母が間違いを犯すなんてありえないって、私だってわかっている。
でもそこは、例えばって話なわけで。
しかしこういう素直なところが、春光のいいところなのだ。