次代の巫女はもういない。
祖母がこの世を去れば、巫女は途絶えてしまうのだ。
私は私の命を、もっと大事にするべきだった。
いや、巫女が途絶えるのも大問題だがそれよりも、自分の命を軽んじるような人間に、伶龍だって安心して背中を任せられるわけがない。

「伶龍。
戻ってきてよ。
今度は私、ちゃんとやるから」

やはり彼はなにも言わない。
居心地の悪い沈黙が続く。

「伶龍、まだ怒って……」

耐えられなくなって口を開いたのは私だった。
しかし彼は最後まで私に言わせず、黙ったままふいっと病室を出ていった。

「……やっぱりまだ、怒ってるんだ」

布団を顔まで引き上げる。
威宗はああ言ってくれたが、やはり私は刀に見捨てられる、最低の巫女だ。



入院期間は時間があるので、大学の課題をこなしつつ改めて穢れについて勉強する。

「うーっ、熱が出そう……」

ペンを置き、ぱたんとベッドに倒れ込む。
過去に穢れ討伐失敗によって引き起こされた災害を知れば知るほど、重圧に押しつぶされそうになる。
一応、知識としてはあの大飢饉も大地震も、穢れが原因だというのは知っていた。