「はい。
刀としては褒められたことではありません。
しかし伶龍は翠様の救出を優先したのです。
この意味、おわかりになりますか」

「……うん」

あんなに怒っていたのに、伶龍は私の命を最優先してくれた。
それだけ、私を大事にしてくれたってことだ。
私はまだ、伶龍に見捨てられていない。
それがわかっただけで胸がいっぱいになり、泣きたくなった。

「早く怪我を治して、伶龍を迎えに行かなきゃ。
それで、謝ったら許してくれるかな」

「はい、きっと許してくれますよ」

威宗が私に微笑みかける。
それで安心できた。



夜、眠っていたら人の気配を感じ、目を開けた。

「威宗……?」

しかし彼は、また朝に来ると帰ったはずなのだ。
それに薄明かりの中、僅かに見える人影は威宗にしては小さい。

「……伶龍、なの?」

なんとなく、彼だと思った。
駆け寄りたいがベッドすら下りられない自分がもどかしい。

「伶龍、なんでしょ?」

呼びかけるが彼からの返事はない。

「ごめん。
本当にごめん。
私、わかったよ。
自分の命を大事にできない人間が、他の人を守れるわけないもんね」

もし、あれで私が死んでいたら。