「お身体に障ります」

取り返そうとするが、威宗は返してくれない。
それどころか自分のスーツのポケットにしまってしまった。

「でも!」

「でもじゃありません。
彼らは無責任に好き勝手言っているだけです」

「でも私はみんなの言うとおり、役立たずの無能だもん!
だったらお叱りの言葉くらい、全部受け止めなきゃ……!」

「翠様!」

威宗から強い声を出され、身体を大きく震わせて口を噤んだ。
怒鳴られるのかと、そのときを怯えて待つ。

「翠様は無能などではありません。
それは生まれたときからお傍で見ている、この私がよく知っています」

彼の目は深い慈愛を湛えていた。
そんな目で見つめられ、私の興奮も収まっていく。
……それでも。

「……でも。
いつも失敗して汚染液まき散らして迷惑かけちゃうし。
とうとう、祓えなかったし……」

言葉は次第に小さくなっていき、口の中で消えた。
落ちてきそうな涙を、鼻を啜って耐える。

「翠様は立派にやっています。
人一倍頑張って、努力なさっているではないですか。
だから、この手なのでしょう?」

威宗がギブスで固定された私の左腕を取る。