いつもそれが当たり前なのに、今日は彼から捨てられた気がした。
それでも出てきそうな涙を堪え、ひたすらに走る。

「大きい……」

見えてきた本体はそびえるほどに巨大だ。
こんなの、祓えるとは思えない。

「でも、やんなきゃいけないんだよね」

頬を叩いて気合いを入れ直し、足場を探してビル街を駆ける。
見上げた遙か先、小さな影がせわしく動いているのが見えた。
きっと伶龍だ。

「無駄だっていってるのに……」

今日も伶龍は効果がないにもかかわらず、穢れに刀を振るい続けていた。

穢れにほど近いビルの、外階段を駆け上がる。
ある程度登り、矢をつがえてかまえた。
ずっ、ずっ、と穢れが少しずつ移動し、身体を形成する蟲がぼろぼろとこぼれ落ちる。
落ちた蟲は周囲を這って広がっていっていた。
あれが禍を起こすのだ。
ただし、核を破壊すればそれらはすべて消える。

「いけっ!」

放った矢は穢れに当たったが、僅かに蟲が散っただけだった。
続けざまに三本、さらに矢を打ち込む。
それでも核はまだまだ見えない。

「もっと近くからじゃなきゃダメか……」

飛び降りるように階段を下り、再び駆け出す。