「……はい、すみません」
祓う巫女が私になってから、除染費用がかなりかさんでいた。
決まった手順どおりに穢れを祓えば核は穢れた液体をまき散らさないので、除染は必要ない。
そして歴代の巫女はよっぽどのことがなければ、そういう事態にならなかった。
なので除染費用は別枠で特別計上が必要になり、何枚も書類を書いていくつもの会議を経て事後承諾してもらう。
あれは本当に大変で……うっ。
思い出したら胃が痛くなってきた……。
「このままでは大穢れが出現したときの予算が確保できなくなります」
〝大穢れ〟、その言葉にびくりと身体が震える。
「……はい、すみません」
まだそれが出現したわけでもないのに心臓がどっどどっどと強く脈打ち、冷たい汗を掻いた。
大穢れとはその字のごとく、特別警報が出されるほどの大きな穢れだ。
母はそれと戦って死んだ。
とはいえ、大穢れは数年に一度しか現れないが。
「とにかく。
いい加減、きちんと穢れを祓ってください。
お願いしますよ」
「……はい。
善処します」
「善処って無責任な政治家ですか、あなたは」