湯飲みを掴むと冷え切った指先がじんじんと痛む。
ふーふーと少し吹いて冷まし、ひとくち飲んだ。
ゆっくりとお茶が身体を内側から温めていき、ほっとした。

「立派な初陣でございましたね」

威宗の声に皮肉の色はない。
それがますます私を落ち込ませた。

「……お世辞はいいよ」

俯いたまま飲み干した湯飲みを威宗に返す。
穢れは一応、祓えたので任務は遂行できたといってもいい。
しかし私たちが手順をきちんと踏まなかったおかげで町は大惨事だ。

「いいえ。
翠様は民を穢れの禍から救ったのです。
胸を張ってください」

きっぱりと力強く、威宗が言い切る。

「……ありがとう」

おかげで少しだけ、元気が出た。

「そういえば、伶龍は?」

もう身を清めおわっていてもおかしくないのに、姿が見えない。

「そろそろ……」

「見たか!
俺の実力!」

威宗の声を遮り、伶龍が騒がしく姿を現した。
私はお茶を飲んで幾分温まったとはいえまだガタガタ震えているのに、彼はほかほかに温まっているように見えた。

「なにが『見たか!』よ!
あんたのせいで町がどうなっているのか、よく見なさい!」