「あ?
俺が核に刀ぶっ刺してトドメ刺せばいいだけだろ」

不機嫌そうに彼が私を睨む。
そうなんだけれど!
そうなんだけれど、そのためには手順を踏まなければ小さな穢れでも大惨事なんだってば!

「大丈夫ですよ、私からも何度も説明してありますし」

苦笑いで威宗がフォローしてくれるが、本当に大丈夫なんだろうか……。

――おおぉぉぉぉーん。

そのうち遠くから低く、地鳴りのような音が響き渡る。
それを聞いて恐怖でびくりと身体が震えた。

「……来た」

隣の伶龍が鯉口を切る音が小さく、耳に届いた。
椅子から立ち上がり、今すぐ飛び出さんばかりに彼が腰をためる。

「まだ。
まだだよ」

穢れは出現しはじめたばかりで、全体はまだ現れていない。
その実体がこの世に確定するまではいくら攻撃しようと無駄なのだ。

「待てるか!」

「あっ!」

その蜘蛛のような長い足が見えはじめたところで、伶龍の脚が地面を蹴った。
そのまま弾丸のごとく飛び出していく。

「嘘でしょ!?」

後ろで祖母が頭を抱えているがわかったが、そんな場合ではない。
とにかく伶龍を追わなければ。

「伶龍!」