……ただし、あぐらで。
そんな彼を祖母が横目で睨みつける。

「……ちょっ、伶龍」

慌てて伶龍の脇腹を指でつつくと、今度は私が彼から睨まれた。
それでも負けじと睨み返す。

「……はぁーっ」

大きなため息をつき、嫌々だけれどようやく伶龍は正座してくれた。
しかしこれは私の言うことを聞いてくれたのではなく、祖母が怖いからだ。

準備が整ったところで祭壇に向かい、祖母が祝詞を唱えはじめる。
こうやって毎朝、神様のご機嫌を伺い、穢れ出現の宣託を受ける。
これは巫女の大事な役目だ。

「……ぐぅ」

隣から小さないびきが聞こえ、びくりと肩が跳ねる。
おそるおそる隣を見たら伶龍が船を漕いでいた。
気持ちはわかる、朝も早く、独特のリズムの祝詞は眠気を誘う。
けれどこれは神聖なお役目なのだ。

「……伶龍、起きて」

祖母に聞こえないように小さな声で声をかけ、彼をつつく。
しかし彼は起きそうもない。
不意に祖母の声が必要もないのに一段階大きくなった。
きっと、気づかれている。
また怒られるのかと心の中でため息をついた。

「ふぅ」

奏上が終わった祖母が小さく息をつき、振り返る。