「あーあ。
私の刀も春光みたいなのだったらよかったのに……」

贅沢は言わないから私の苦手な威宗でもいい。
それなら少なくとも儀式で恥を掻かずに済んだ。

「ご苦労されているみたいですね」

春光が苦笑いを浮かべる。

「もーさー、全然言うこと聞いてくれないし……」

別に食べたいなら食べてはいけないなんて言わない。
ただ、盗まないで言ってくれと注意しただけなのに「俺に指図するな」とキレられた。
万事がこんな感じで、これで穢れが祓えるのかと気が重い。

「大丈夫ですよ、きっとすぐに打ち解けられますって。
僕も最初は光子様がとても怖い方に見えて、いつ怒られるのかとびくびくしていましたから」

春光はおかしそうに笑っているが、この曾祖母が怖い?
私から見ればひ孫に甘いただのお婆ちゃんで信じられなかった。

曾祖母と春光に愚痴を聞いてもらい、幾分すっきりして自分の部屋に戻るついでに、隣の伶龍の部屋を覗いた。

「伶龍……」

「あ?」

部屋の中で伶龍は、寝そべって週刊少年まんが雑誌を読んでいた。
てか、どこで手に入れた?
我が家にはあんなもの、買う人間はない。