「僕、お茶を淹れてきますね」

座った私とは反対に、春光が立ち上がる。

「え、いいよ」

「いえいえ。光子(みつこ)様も喉が渇いていると思いますし。
では」

私に会釈し、春光が出ていく。
威宗といい、本当にできた刀だ。

「ねー、大ばあちゃん。
春光は最初からああだったの?」

伶龍はまだ、人の姿になって日が浅い。
だからあの態度なのだと思いたい。

「そうさねぇ、春ちゃんは最初から手のかからない、いい子だったよ」

曾祖母は春光を息子のように〝春ちゃん〟と呼ぶ。
それがいいなと思っていた。

「そっかー……」

ということは伶龍のあれは規格外なんだろうか。
こうは言いたくないが、やはり〝ハズレ〟を引いてしまったのかと後悔ばかりが思い浮かぶ。
適当に選ばないで、もっと真剣に向かいあっていれば。
いや、真剣に向かいあった結果、行き詰まってあれになったのだが。

「大丈夫だよ、翠ちゃんもそのうち、あの子と仲良くなれるよ」

項垂れてしまった私の背中をぽんぽんと叩き曾祖母は慰めてくれるが、私はそんな気がまったくしなかった。

そのうちお茶を淹れて春光が戻ってくる。