「伶龍、なにやってんの!」

なにかおやつがないかと台所へ来たら、伶龍がいた。
それはいい。
私だって物色しに来たんだし。
問題はその口に咥えられ、さらに腕にまで抱えられているまんじゅうだ。
あれはそろそろやってくる、政府の高官たち用に準備していたもののはずだ。

「ヤベッ、見つかった!」

しかし伶龍は私に見つかったとわかるやいなや、猿のように飛んで逃げていった。

「ちょっ、待ちなさい……!」

追いかけて台所を出たが、もうその辺りに彼はいない。

「くっそー!」

地団駄を踏んだところで仕方ない。
伶龍が台所で食料を食い荒らしたのはもう、一度や二度ではない。
来客用のお菓子はもちろん、準備のできていたおかずをやられたこともある。

「刀に食欲はないはずなのに……」

はぁーっと私の口からため息が落ちていく。
刀は食事が必要ない、嗜好品程度に口にするだけだと聞いていた。
実際、春光も威宗もそれくらいしか食べない。
しかし伶龍は欠食児童のごとく、いつも食べ物を漁っていた。

「とりあえず威宗に言って新しいのを買ってこないとね……」

また私の口からため息が落ちていく。