「だったらあれは、なんなのよ……」

いきなり国のお偉いさんたちに喧嘩売ってさ。
ありえない。

「自分の気持ちに素直なんじゃないかい?」

祖母は思い出しているのかおかしそうに笑っているが、こっちは笑い事じゃないのだ。

「まあ、頑張って仲良くしな」

着替え終わった祖母が慰めるように私の肩を叩く。
しかし私の心はどんよりと重くなっただけだった。

儀式のあとは宴の席が設けられる。

黙って料理を口に運びながら、隣に座る男、伶龍に視線を向ける。
黒スーツを着るとますます彼はヤクザに見えた。

「あ?」

私の視線に気づいたのか、彼が睨みつけてくる。

「……なんでもない」

そろりとまた、自分の前のお膳へ視線を戻す。
ちょっと見ていたくらいであんなに睨まなくたっていいと思う。
これからパートナーとしてやっていくわけだし。

「ああ、くそっ。
苛々する!」

伶龍が悪態をつき、会場内が一瞬静まりかえった。
けれど彼はかまうことなくネクタイを緩め、シャツのボタンを外した。

「なんでこんな格好しなきゃいけねーんだよ」

さらに立て膝にして足を崩す。
いくら無礼講の席でも、これはない。