無茶を言いながら先に到着していた伶龍が、それに向かって刀を振るっている。
刃がそれに当たるたび、キン、キン、と高い音がした。
靄に見えるアレは無数の蟲で、刀では歯が立たない。
なのに伶龍は無意味に、刀を振るい続けていた。

「ちょ、援護するから!」

周囲を見渡し、視界の開けた場所を素早く探す。
滑り込むようにそこへ移動し、弓をかまえて弦を絞った。
的は大きいので狙いを定める必要はない。
ひゅんと矢が空気を切る音がしたあと。

――うぉーん!

大きな雄叫びを上げ、それが身を捩ったように見えた。
矢の当たった周辺の蟲が、散っている。
それもそのはず、この矢は対蟲用の術を付加した特殊な矢なのだ。
一度は散った蟲たちだが、またすぐに集まり元の形を作った。
この矢には一時的に蟲を蹴散らす力しかない。
あの中に隠されている、核を破壊しなければ。

すぐに第二射を放ちたいが、私にかまわず刀を振るい続ける伶龍が邪魔だ。

「ちょ、邪魔!
どいて!」

「うっせぇっ!」

私を振り返りもせず、伶龍は強引に力で押していく。
その勢いには感情などないはずのそれもたじろいでいるように見えた。