彼は憐れむ目で私を見ている。

「伶龍はもういないのです。
現実を受け入れなさい」

なにも言えなくなって、また俯いた。
伶龍は私を庇って折れた。
死んだのだ。

女性に伴われて病院に向かう。
そこでは威宗と春光が待っていた。

「威宗。
ばあちゃんは?」

「予断を許さない状況ではありますが、命は取り留めました」

「そう」

それを聞いて、とりあえずほっとした。

「春光。
大ばあちゃんは?」

「薬が効いて今はぐっすり眠っています。
『穢れに吹っ飛ばされて受け身も取れないなんて、私も耄碌したね。
よくなったら翠と一緒に鍛錬をしようかね』なんて笑っていましたから、大丈夫です」

思い出しているのか、おかしそうに春光が笑う。

「さすが、英雄だね」

それに少しだけ、笑って返しておいた。

私も疲労が酷く、二、三日の入院が言い渡された。

「つか、れた……」

個室のベッドに、倒れ込む。

「……伶龍」

折れてしまった刀は、二度と元に戻らない。
もう二度と私は、伶龍に会えないのだ。

「……嘘つき」

死なないって約束してくれた。
なのに彼は、折れてしまった。