長い夜が明け、激闘のあとをしんしんと降り積もる雪が隠していく。

「伶龍……」

刀からはもう、彼の声は聞こえない。
もう、彼はこの世にいないのだ。

「嘘だと言ってよ……」

折れてしまった刀を抱き、仮設司令所で丸くなる。
祖母は穢れの足に大きく身体を抉られ、危篤状態だ。
曾祖母は無事だが全身打撲で動けない。

「……翠さん、手を」

救護員の女性から声をかけられた。
返事をせずにいたら彼女は私の前に座り、両手を取った。

「痛くないですか」

てきぱきと血だらけの私の両手を消毒し、彼女は包帯を巻いていく。

「ここは我々に任せて、あなたも病院へ行ってください」

彼女の後ろに立っている、柴倉さんの声が頭の上から降ってくる。

「でも、伶龍、が」

きっとすぐに、「なに泣いてんだよ」って笑いながら戻ってきてくれるはず。
そう信じて、ここから一歩も動けずにいた。

「伶龍はもう、いないんです。
あなたが抱いているそれが証明しているでしょう?」

柴倉さんから指摘され、びくりと刀を握る手が反応する。

「でも。
……でも!」

勢いよく顔を上げると、柴倉さんと目があった。