静かに目を閉じ、そのときを待つ。
しかし、いくら待っても痛みはこない。
おそるおそる目を開けると、私に覆い被さる伶龍が見えた。

「絶対に俺が、翠を死なせねぇって言っただろ?」

右の口端をつり上げ、彼がにぃっと笑う。

「れい……りょう?」

彼の胸からは穢れの黒い足が、赤く濡れて光って生えていた。

「オマエが無事なら、それでいい」

私の頬を撫で、眼鏡の下で伶龍が目尻を下げて優しげに笑う。

「……ダメ。
ダメだよ、伶龍!」

穢れの足が、次第に消えていく。
すべて消え去ったとき、ぱきんと伶龍が折れる音がした。