育ての親とはいえ私は、さばさばとした祖母が苦手だった。

「いい加減、決めたらどうだい。
あんなもん、手を突っ込んで適当に掴めばいいんだよ」

はぁーっと呆れたように祖母がため息をつく。

……その結果が、それですか。

ちらりと、祖母の後ろに立っている男に視線を向ける。
目のあった彼は、柔らかく私に微笑みかけた。
髭面で筋骨隆々な彼は、祖母の刀だ。
数えで二十歳のときに彼を選び、以来折れることなく四十三年。
祖母は彼とともに過ごしている。
ちなみに黒スーツ姿なのは、それが刀の制服みたいなものだからだ。

「いや、適当とか言われてもさ……」

ごにょごにょと口の中で呟き、庭石に視線を向ける。
折れたりしないかぎり、選んだ刀と生涯をともにせねばならない。
ならばお婿さんよりももっと慎重に選ばないと……などと思っているのは、私だけなんだろうか。

「うだうだ悩んだところで決まりゃしないだろ。
掴んだそれが運命の刀だ、覚悟決めろ」

「あいたっ!」

私の背後に手を回し、祖母が思いっきり背中を叩く。

「とにかく早く決めておくれよ。
皆、困るんだからさ」