もっとも、こんなに大きくても蟲は壁をすり抜けるので、建物などに蟲による被害はほとんどない。

「こりゃ、AAA級だね」

隣を走っていた祖母が、にやりと笑う。
穢れ本体の高さは、高層ビルと同じくらいあった。

「でも、やるよ」

「はい!」

私の返事を聞き、祖母が離れていく。

「威宗!」

「はっ!」

呼ばれて駆け寄ってきた威宗は祖母を抱え、軽やかな足取りでビル壁を蹴り、上へ上へと登っていく。
そのうち、ほどよい高さのビルの屋上へ着地した。

「伶龍!」

「おう!」

同じように伶龍に抱えられて私もビルを登り、祖母よりも少し高いビルの屋上に陣取る。
眼下の祖母は穢れに向かって弓をかまえていた。
祖母に危険がないよう、伶龍共々まわりに目を配る。
すぐに限界まで弓を引き絞り、祖母が矢を放った。
勢いよく飛んでいった矢は、穢れ本体の蟲の群れに突き刺さる。
さらにそのまま蟲たちを引き裂きながら、中心へと進んでいった。
矢の通った場所の蟲が散り、すり鉢状の大穴が開く。

「凄い」

祖母の戦いを見たことはある。
高校を卒業してからは毎回、現場に着いていっていた。