その日、私は古びた木箱を前にしてうんうん唸っていた。

「……わからない」

大きめの、手提げ金庫サイズくらいの木箱の中には、大量の鍵が詰まっている。
これらはこれから、下手すれば生涯を共にする刀をしまってある箱の鍵だ。
この中からひとつ選べ、とは言われたものの。

「せめてヒントをおくれよ……」

じっと見つめているのも飽きて、ごろりと床に寝転ぶ。
明日の大晦日までには決めろと祖母からは口うるさく言われていた。
年明けて正月の祝いとともに私の数えで二十歳の祝いもおこない、そのときに刀のお披露目をするとなればそうなるのはわかっている。
しかし私はこの鍵の入った箱を渡されて一週間、いまだに選べずにいた。

少し気分転換しようと、ガラス障子を開けて部屋を出る。
縁側を台所へ向かって歩いていたら、向こうから祖母がこちらに向かってきているのが見えた。
着物姿でその高い背をしゃんと伸ばし、おかっぱ頭なのですぐにわかる。

「決まったのかい」

私の顔を見た途端、もうこのところ挨拶にようになっていた言葉が祖母の口から出てくる。

「……まだ」

ふて腐れ気味に俯いて視線を逸らす。