「だからそこを目指して、矢を打ち込めばいい。
まあ、翠にはまだ、早いけどね。
だからアンタは私らのバックアップにまわりな」

「うん」

私が覚醒すれば、祖母たちがバックアップで私が前面に出られるんだろうか。
しかし、どうやれば覚醒できるのか、私にはわからなかった。



すぐに大穢れ出現予定日が迫ってくる。
明日からはもう、仮設司令所へ詰めなければならない。

「はっ。
……はぁ、はぁ、はぁ」

夜中、悪夢を見て飛び起きた。

「……最悪」

私の口から乾いた笑いが落ちる。
大穢れが出現すると宣託が下ってから毎日、同じ夢を見ている。
母が死ぬ、あの日の夢だ。
さらに死ぬのは母ではなく私に変わっている。

「眠れねぇのか」

私が目覚めたのに気づいたのか、伶龍との部屋を隔てるふすまが開いた。

「あー、うん。
ごめん、起こしちゃった?」

なんとなく、笑って誤魔化す。

「バーカ。
別に強がる必要なんてねぇ」

入ってきた伶龍は、私の隣にどさりと腰を下ろした。

「こえぇんだろ」

「あー……」

気持ちを見透かされ、それでも素直に肯定できない。
認めてしまったら、大穢れに負けそうな気がしていた。