そこは一面淡い桃色の甘ったるい世界。
(なんでこんなことに)
「おまたせいたしました~! まゆタレうさぎのいちごパフェとランダムコーヒーです!」
ごゆっくりどうぞと言って去っていくフリルたっぷりの制服を着た女性。
ここはほとんどの客が女性のファンシーなカフェ。
「ありがとう、付き合ってもらっちゃって」
「ううん。大丈夫」
「まゆタレうさぎとのコラボなんだ! どうしてもグッズが欲しくて!」
普段のキレイに整った笑い方とはまた違う子どものような笑顔。
小さな男の子がおもちゃのロボットで遊んでいるときと同じように目をキラキラさせている。
今を時めくキュートなコラボカフェに彼はすっかり童心にかえっていた。
「男一人じゃ入りにくくて。周りには好きなこと話してないんだ」
かろうじて聞き取ることが出来、私は安堵して頬を緩める。
「いいと思うよ。まゆタレうさぎ、かわいいよね」
これだけ人気キャラクターなのだから隠す必要もないだろうに、と疑問に思うが口にしない。
彼ほどの人気者ならばゆるキャラが好きという一言でギャップに女子がときめくはずだ。
人の多いカフェではたくさんのお客さんやBGMで色んな音が耳に入ってくる。
私が耳を傾けたいのは彼の声だというのに、調子よく音を拾うには意識を強める必要があった。
だが自分の目の前にもコラボメニューのオムライスとサラダが届き、気持ちはそちらへと向かう。
まゆタレうさぎが主流ではあるが、私はサブキャラクターの”まゆクシャいぬ”が好きだった。
オムライスの旗に描かれたキャラクターのイラストを見て気持ちが和らいでいく。
(クシャ顔の紳士なところがいいんだよね)
ひとりでは縁のなかったコラボカフェに来ることが出来、ほんの少しの照れもありながら嬉しく思う。
キラキラした場所への憧れが強いわりに、一人で道を切り開いていくことが出来ない。
サラダを頬張りながら、はじめての経験にすっかり緊張が解けていた。
だがしばらくして、彼の手がまったく動いていないことに気づき顔を上げる。
頬をほんのり染めて、うっとりとした目でこちらを見ていた。
溶けそうなほどに甘いマスクに私は茹でたタコのように赤くなる。
「あの、何かおかしいですか?」
「ううん、嬉しいだけ。こんなふうにずっと武藤さんと話したかった」
爽やかが板についている。
戸惑いもなく甘い言葉を口に出来るのだから、相当女子と付き合うことに慣れているのだろう。
そんな別次元の人が私にそんなことを口にするのはどういった気持ちなのか。
(ちゃんとケジメつけよう)
振り回したらダメだと戒める。
先ほどまでおいしく感じていたサラダも途端に喉を通らなくなった。
(なんでこんなことに)
「おまたせいたしました~! まゆタレうさぎのいちごパフェとランダムコーヒーです!」
ごゆっくりどうぞと言って去っていくフリルたっぷりの制服を着た女性。
ここはほとんどの客が女性のファンシーなカフェ。
「ありがとう、付き合ってもらっちゃって」
「ううん。大丈夫」
「まゆタレうさぎとのコラボなんだ! どうしてもグッズが欲しくて!」
普段のキレイに整った笑い方とはまた違う子どものような笑顔。
小さな男の子がおもちゃのロボットで遊んでいるときと同じように目をキラキラさせている。
今を時めくキュートなコラボカフェに彼はすっかり童心にかえっていた。
「男一人じゃ入りにくくて。周りには好きなこと話してないんだ」
かろうじて聞き取ることが出来、私は安堵して頬を緩める。
「いいと思うよ。まゆタレうさぎ、かわいいよね」
これだけ人気キャラクターなのだから隠す必要もないだろうに、と疑問に思うが口にしない。
彼ほどの人気者ならばゆるキャラが好きという一言でギャップに女子がときめくはずだ。
人の多いカフェではたくさんのお客さんやBGMで色んな音が耳に入ってくる。
私が耳を傾けたいのは彼の声だというのに、調子よく音を拾うには意識を強める必要があった。
だが自分の目の前にもコラボメニューのオムライスとサラダが届き、気持ちはそちらへと向かう。
まゆタレうさぎが主流ではあるが、私はサブキャラクターの”まゆクシャいぬ”が好きだった。
オムライスの旗に描かれたキャラクターのイラストを見て気持ちが和らいでいく。
(クシャ顔の紳士なところがいいんだよね)
ひとりでは縁のなかったコラボカフェに来ることが出来、ほんの少しの照れもありながら嬉しく思う。
キラキラした場所への憧れが強いわりに、一人で道を切り開いていくことが出来ない。
サラダを頬張りながら、はじめての経験にすっかり緊張が解けていた。
だがしばらくして、彼の手がまったく動いていないことに気づき顔を上げる。
頬をほんのり染めて、うっとりとした目でこちらを見ていた。
溶けそうなほどに甘いマスクに私は茹でたタコのように赤くなる。
「あの、何かおかしいですか?」
「ううん、嬉しいだけ。こんなふうにずっと武藤さんと話したかった」
爽やかが板についている。
戸惑いもなく甘い言葉を口に出来るのだから、相当女子と付き合うことに慣れているのだろう。
そんな別次元の人が私にそんなことを口にするのはどういった気持ちなのか。
(ちゃんとケジメつけよう)
振り回したらダメだと戒める。
先ほどまでおいしく感じていたサラダも途端に喉を通らなくなった。