だから二人に話すことで今後、どのような反応が返ってくるかが怖くてたまらない。

今はわかろうとしてくれても、未来で同じ姿勢をみせてくれるとは限らない。

嫌気が見えたとき、私は逃げてしまっていたのでその先を知らなかった。


「……武藤ちゃん、苦労してるんだね」


莉央が膝をたて、私の頭部を撫でてくる。

そのやさしい温度に涙腺がゆるみ、唇を噛みしめた。


「どうしようも出来ないから。 だから人を避けてました。……傷つけて、怒らせてごめんなさい」

「違うでしょ!? 分かってなかったから勝手にイラついたの!」

「わっ!?」


大粒の涙をこぼして杏梨が飛びついてきた。

私は押し倒され、敷布団の上で目を丸くする。


「私こそごめんなさい。 相手の事情とか、考えたことなかった」


切羽詰まった様子で杏梨は震えており、私はどういった反応を返せばいいのかわからなかった。


「知ろうとさえ思わなかった。勝手にこうなんだって決めつけてた。ごめんね、武藤さん」

「私も、ごめんなさい。……本当はみんなと仲良くなりたい」


今でも怖くてたまらない。

逃げ出せば楽なこともわかっている。

でも前向きな気持ちがあるときまで逃げるのは嫌だった。

ずっと口に出せなかった本音があふれ出す。


「二人と、友達になりたいです」


まわりに理解されたかった。

嫌われたくなかった。

自分が原因で不快な思いをさせるのが嫌だった。

そうやって顔色をうかがううちに本音なんてものは隠れることを覚えてしまった。


一人はさみしいくせに。

まぶしい人たちをみてうらやましいと思うくせに。

自分が相手を理解しようとしていなかったくせに、相手を責めていた。

悲しむのはそれくらい相手に真剣になってからでも遅くない。

愛情も友情も、この手に溢れるほどに欲しいと思ってしまった。

ずっとずっと隠していたのは……愛されたいという感情だ。

私は好きな人にも、友達にも、本当の心で向き合いたい。

”言えなかったこと”なんてないほどに、繋がりたかった。


「おー、よしよし。君たちカワイイねぇ! おねーさんが抱きしめてあげましょう!」

「おっさんかよ!」

「……ふふ」


にたりと口角をあげた莉央が大きく手を広げ、私たちの上に乗ってくる。

まるで覆いかぶさるかのように撫でまわしてくるのでくすぐったくなり笑ってしまった。

すかさず突っ込んでいた杏梨だったが、温もりに触れてボロボロと泣き出してしまう。

つられて私も鼻を鳴らして泣いてしまうのだから、慰める莉央は忙しかった。