彼のやさしさに触れ、乱れていた感情が落ち着いていた。

莉央からの連絡を受けて彼がここにいるわけだが、残された莉央と杏梨はいたたまれない状態だろう。


(私は二人とどう向き合いたい?)


いつもならば逃げてそのままにしてしまっていた。

今は違う。

理解されなくても、それを私がわかっていきたい。

莉央と杏梨はどんな性格で、どんなことを考えているのか。

私のことを伝えたとき、何を思って反応するのだろう?

傷つくかもしれない。

だがわかってほしい相手なのだから、諦めるのも早かった。


「松丸さんとも上原さんとも仲良くなりたい」


その気持ちに向き合うことは勇気のいることだ。

失敗を恐れる私はこの先どうすればいいのかわからない。


「でも、怖くて自信なくて……。いつも人に怯えて逃げてたからどうすればいいか……」

「そういう時は他に頼れる人に任せなさい!」


誇らしげな笑みが眩しい。

そういえば彼は太陽のようにまぶしい人種だったと思い出す。


「今はオレが一番頼れるでしょ? 一緒に話し合いに行こ?」

「……うん」


苦手だと壁を作っていた。

それが今ではこんなにも頼りになるなんて。


「ありがとう」


人と関わることは高い高い壁。

一人では乗り越えられないこともある。

怖がりな私の背中を押してくれるのは、眩しいと思っていた太陽だった。



ーーーーーーー

彼が莉央に連絡をとり、話し合いをする流れとなった。

振り分けられた部屋へと戻ると莉央と杏梨がすぐさま立ち上がろうとする。

気を使われているのだと、私はあわてて部屋へと駆け込み二人の前に座った。

肩を張る私に彼はくすりと笑い、扉をコンコンと鳴らした。


「オレ、玄関にいるから。ヤバそうだったら乱入するのでよろしく」


ひらひらと手を振り、彼はふすまを閉めて姿を隠す。

女子三人で向き合う形となり、しばらく無言が続いた。


「……急に飛び出して、ごめんなさい」


なけなしの勇気を振り絞る。

逃げてばかりではいられないと意識を強く持つと情けないほどに声が震えていた。