「旅行中、武藤さんのこと頼んでいい? まっつーが一番安心」

「もち。前から武藤さんと話したいと思ってたんだよねー」

面倒見の良さにも定評があり、莉央はさっそく私を手招きして頭頂部を撫でてくる。

私は身長が平均よりも低いので、長身の彼と莉央に挟まれると埋もれてしまいそうだ。


「でもなんで隼斗が頼むの?」

「か、彼女だから」

ポッと赤くなる彼。

普段は豪快なほどに好意をむき出しなくせして、他人に問われると年相応に恥ずかしがる。

爽やかな彼が特定の人にデレデレする姿はクラスメイトに不思議な光景として見られていた。

「本当に付き合ってたんだー。隼斗の片恋だと思ってた」

「かわいいだろ?」

「かわいい。かわいいけど! 隼斗が自慢することじゃないよ」

「すみません……」

「あああ! 武藤ちゃんが謝ることじゃないよー!」

(武藤ちゃん……)

ほとんど会話をしたこともないのに、早くも友好的だ。

陽気な莉央は眩しく見えた。

私とは真逆の人種に、つくづく彼の友好範囲の広さを痛感した。


ーーーーーーー


「女子はこの三人でー、男子はーー……」

決まったのは私、莉央、そして杏梨だった。

どちらもクラス女子、しいては学年でも目立つ華やかな女の子だ。

隅っこに座りながら一人だけ湿気まみれなことが後ろめたい。

男子生徒は彼と、友人の拓海。

もう一人は一匹狼の無口な男子、登坂 史也だった。


「メンバー濃っ!」

(それは私が言いたいです……)

莉央の突っ込みは私の代弁となっており、ますます肩をすくめて小さくなった。

自己紹介はするまでもないと、杏梨がテキパキと話し合いを進めようとする。


「じゃあ班別行動時に行く場所を決めましょう。……リーダーは私でよかった?」

「おっけーよろしくね」

「上原なら頼もしいな」


能天気に返事をする拓海に、にこっと爽やかに微笑む彼。

すると杏梨がパッと目を反らし、動揺で声を震わせながら続けようとする。

耳まで真っ赤な様子に気づいたのは私だけだった。