正しく言葉が拾えない世界で、キミは怖かった

「何言ってるの!? 武藤さんほどかわいくてやばいのいないよ!!」

「ほわっ!?」

グッと手を握られ、太陽よりも眩しい恒星の瞳を向ける。

ぐわっと激しく、早口に。

隠す必要のなかった彼の世界が大爆発を起こした。

「ぴょこぴょこビクビクとなんかもう動いてるだけでかわいいし! ご飯もごもご食べるのもかわいいし!」

「えーっと……」

「ほっぺ柔らかいし、抱きしめるとほんっとに潰しそうで怖くなるくらいかわいい!」

「ねぇ待って、は、恥ずかしーー……」

「それにっ……笑うとめちゃくちゃかわいい」

熱っぽい吐息とともに彼が私の肩に顔を埋める。

後ろ向きな感情一つない恋は制御不能。

それを押し返せるほど私は甘いものが嫌いではなかった。


「いつもこっそり頑張っててなんかもぅ……いじらしくてかわいいんだ」

この衝動を抑えられないのは私のせいだと責めてくる。

そんな一方的な歪な愛に私はついていけない。

それほど愛情を向けられるだけの資格はないと、悲しくなって指を丸めた。


「ごめんなさい。全くわかりません」

その一言に彼は眉をさげて切なく微笑む。


「そんなものだよ。自分でもヤベー奴ってのはわかって……」

「そうじゃなくて! 私がかわいいって思う気持ちがわからないの!」

「え、なんで!?」

「なんでって……」

会話が本筋とは離れた方向に飛んでいる気がした。

彼はやたらとかわいいと褒めてくれるが、自分がその言葉に値する人間と思っていない。

卑屈で、後ろ向きで、動き出すことが出来ずにみんなの後ろ姿を見ているだけ。


(全然かわいくないから。……私を好きなんて、わかんない)

彼は私を知らないから。

人をイラつかせる私が誰かに好かれる理由が見えてこない。

その熱っぽい瞳に私はどう映っているのだろう。

他の人には陰鬱だととらえられる姿が光って見えるのだろうか。


(知りたい……なんて)

「武藤さんはかわいいし優しい。好きになる理由はそれだけじゃダメ?」

「何か勘違いさせたならごめんなさい。でも私、好きって言われるような人間じゃない」

「そんなふうに言わないで! オレ、本当に武藤さんが好きだから!」


それは切羽詰まった情熱。

音色から溢れ出す欲に触発され、私の頬が赤く染まる。

大きな手が伸びてきて、私の耳をなぞって包んだ。


「自信なくてもいいから、オレの気持ちは否定しないで」


こんなにたくさんの愛情を向けられたことがない。

はじめて受けるそれは小さな受け皿にはいっぱいすぎるもので、あふれ出す。


「えっ!? 武藤さん!?」