(こんな調子に乗った聞き間違いとは……)
私は言葉を聞き取ることが苦手だ。
それでよくコミュニケーションのすれ違いが起きる。
相手の言葉に返す勇気は人一倍必要なため、私は目を丸くして彼を見つめ返した。
だが珍しく正しく受け取ったようだ。
シェパードを撫でていた手を取られ、熱く情熱的に見つめられた。
「武藤さん! オレの彼女になって!」
「……はい?」
(彼女。……彼女?)
ここは私と彼以外いない静かな夜の公園。
私が言葉を聞き取りやすい雑音のない環境だ。
言葉を認識するまでに時間を要し、しばらく間が開いてしまう。
ようやく言葉の意味を理解した時、私は反射的に彼から手を引っ込めていた。
(意味わかんない意味わかんない! 彼女!? なんで!?)
「武藤さんが好きです! もう我慢むりっ!!」
(もっとわかんない! 私を好きって言ったの!?)
いつもは聞き間違いで落ち込むことばかりだが、聞き間違いであることを願ったのははじめてだ。
こんな恥ずかしい言葉は勘違いさえも痛々しい。
聞き返すことさえ抵抗感のある言葉に私は焦って声が裏返ってしまった。
「えっ……いや、あの……!」
「あ、やっぱりダメだよね。急に好きとかキモイよね」
落ち込む彼に私の焦りはなお大きくなる。
会話が不得意な人間にとって、誰かに謝られることの威力は大きい。
「あー! 違うの! 引いてるとかそういうのでは」
「えっ!? じゃあ彼女になってくれる!?」
「ひあっ!?」
困惑ですまない、もはやパニック状態。
自分の中にあった常識がひっくり返るような衝撃に反応速度が追い付かない。
あたふたするばかりの私に彼はしょんぼりとして、わずかに震える手ですがるように握ってきた。
「……大事にします、ので。お願いします」
「わかった、わかったからあのっ!」
「え……これ現実?」
目をぱちくりさせている彼に私も瞬きを繰り返す。
(……あれ?)
何かがおかしい。
私は言葉を聞き取ることが苦手だ。
それでよくコミュニケーションのすれ違いが起きる。
相手の言葉に返す勇気は人一倍必要なため、私は目を丸くして彼を見つめ返した。
だが珍しく正しく受け取ったようだ。
シェパードを撫でていた手を取られ、熱く情熱的に見つめられた。
「武藤さん! オレの彼女になって!」
「……はい?」
(彼女。……彼女?)
ここは私と彼以外いない静かな夜の公園。
私が言葉を聞き取りやすい雑音のない環境だ。
言葉を認識するまでに時間を要し、しばらく間が開いてしまう。
ようやく言葉の意味を理解した時、私は反射的に彼から手を引っ込めていた。
(意味わかんない意味わかんない! 彼女!? なんで!?)
「武藤さんが好きです! もう我慢むりっ!!」
(もっとわかんない! 私を好きって言ったの!?)
いつもは聞き間違いで落ち込むことばかりだが、聞き間違いであることを願ったのははじめてだ。
こんな恥ずかしい言葉は勘違いさえも痛々しい。
聞き返すことさえ抵抗感のある言葉に私は焦って声が裏返ってしまった。
「えっ……いや、あの……!」
「あ、やっぱりダメだよね。急に好きとかキモイよね」
落ち込む彼に私の焦りはなお大きくなる。
会話が不得意な人間にとって、誰かに謝られることの威力は大きい。
「あー! 違うの! 引いてるとかそういうのでは」
「えっ!? じゃあ彼女になってくれる!?」
「ひあっ!?」
困惑ですまない、もはやパニック状態。
自分の中にあった常識がひっくり返るような衝撃に反応速度が追い付かない。
あたふたするばかりの私に彼はしょんぼりとして、わずかに震える手ですがるように握ってきた。
「……大事にします、ので。お願いします」
「わかった、わかったからあのっ!」
「え……これ現実?」
目をぱちくりさせている彼に私も瞬きを繰り返す。
(……あれ?)
何かがおかしい。