「じゃあ、ペア組んでストレッチからなー」

その言葉を聞くたびにいつも絶望する。

和気あいあい女子たちがペアを組んでストレッチをはじめるなか、私はコソコソとその場から逃走した。

(むーりーっ!!)

体育の時間は苦手だ。

運動が嫌いなわけではないけれど、私はあの中には入れない。

ペアを組む相手がいなくてオロオロしていると、気づかって声をかけてくれる人もいる。

その中に入ったときに「気にしなくて大丈夫だよ~」と言われるたび、私は土下座をしたい気持ちでいっぱいだ。

惨めさと、罪悪感と……ひたすら自己嫌悪。

人と同じように笑えばいいだけのことだろうが、それがとても難しい。

普通の女子高生に憧れながら、普通が一番難しいことに気づく。

体育館の裏で段差の部分に座り込み、膝をかかえてうずくまる。

早く終われと願う時ほど、時間が経過するのは遅かった。

体育館から聞こえてくるボールの弾ける音に耳を傾け、顔をあげた。

中からバスケットボールが転がってきて、壁にぶつかって逆走し、止まる。

このままではボールは外に放り出されたままだと、私は立ち上がってボールを拾う。

「そっと投げ入れれば……」

「あ、武藤さん」

「ひあーっ!?」

「あ、ごめん」

ボールを返そうと体育館の中を覗き込むと、扉付近に立っていたであろう彼と目が合う。
勢いだけで後退り壁まで叫んで走る。

クスクスと笑いながら彼は体育館から出てきて、長身で私を見下ろす。

「もしかしてサボり?」

「あぅ……」

グサッと罪深さが痛む。

胸を押さえ、いたたまれずにソワソワしていると彼はふわりと頬を紅潮させて私の頭を撫でる。

このスマートな手癖はなんだろうと思いながらも、振り払う気にはなれずに受け入れた。

「女子ってたしかテニスだよね?」

「そうだけど。……ごめんなさい」

「謝ることあった?」

「さ、サボってるし!」

逃げてばかりの性格だが、基本的には真面目だと認識している。

アルバイトでお金を稼ぐだけで目標が達成できるとは思っていない。

コミュニケーションが満足に取れないのならば相応の学が必要だと考えていた。

だからといって勉強が得意というわけでもないので、周りに置いていかれないよう意地を張っていただけだった。

がんじがらめの私を解くように彼はマシュマロみたいに甘く笑う。

頭を撫でられているとまるで小動物のような気分だった。