「待ちな」

彼女を追おうとしたところで、背後から呼び止められる。

「あれはここの人間じゃないだろう。あんた、あの子の面倒見てやろうって? 酔狂なやつだねぇ」

俺を呼び止めた面売りの女性は、そう言って一度、煙管に口をつける。

「……ただの気まぐれです」

俺の言葉に彼女が笑う。少し開いた唇から、白い煙がふわりと漏れた。

「ふふっ。そう拗ねた声を出さなくても、別に責めちゃいないよ。揶揄ってる訳でもない」

「拗ねてません」

「ふははっ。そうかい、そうかい。でも、これだけは言っておくよ。あまり積極的にあちらに関わるのは感心しない。ま、あくまでも私の個人的な意見だけど」

「……分かっています」

「それならいい。引き止めて悪かったね。もう行きな。あの子を見失っちゃあ不味いだろう」

「はい。ご忠告、感謝します。では」

「じゃあね」

ひらりと手を振った彼女はもう、こちらへの興味を失ったようだった。どこか胡乱で退屈そうな視線が、夜空に登る煙の行方を、ただぼんやりと眺めていた。