けれどその年、二人で交わした約束が果たされることはなかった。

なぜなら、二人のうち一人

彗にぃが、この世を去ったからだ。


 彗にぃの容態が急変したのは、あの約束から一ヶ月が経とうとしていた、ある日のこと。季節は完全な夏を迎え、その日は朝から蝉がうるさく鳴いていた。

後から聞いたことだけれど、彗にぃはこの病院に来た時点で、保って半年と余命を宣告されていたらしい。そんな事、私は一度も彗にぃの口から聞いていなかった。

また私は一人、白く、清潔なこの部屋に取り残された。目の前のベッドは、まるではじめから誰もいなかったみたいに、シワ一つ残さず整えられている。

その日から、私は、林檎が食べられなくなった。