「ねぇ、今年も来たよ」

一人、見上げた空には大輪の花。

「綺麗……」

呟いたその声は

花咲く夏の夜空の中に

混ざって、

溶けて、

そうして消えた。



*** ***



 地域の小さな神社で開催される夏祭り。十六歳を迎えた年から、欠かさず足を運んで今年で三年。

祭りのメイン会場となっている場所は、神社の入り口、鳥居から拝殿までの境内一帯だ。中央に(やぐら)が組まれ、その周りを囲うような形で様々な屋台が並んでいる。

そこにあるのは、微かな騒めき。ちょっとした非日常への、静かな興奮。

下駄が地面を打つ音が聞こえる。カラン、コロンという涼やかな音が、耳に心地良く響く。

私は、そんな祭りの喧騒からそっと抜け出した。拝殿の脇を通り、奥へと進む。その先に、この神社の本殿がある。いつも通り、迷わず歩みを進めて。そうして、本殿の前、そこへ続く五段ほどの階段に、私はそっと腰を下ろして呟いた。

「もう、三年になるんだね」

一人静かに瞳を閉じて。そうすると自然、じんわりと、瞼の裏にあの日の景色が蘇る。さっきまであんなに近くで聞こえていた祭りの音が、嘘みたいに遠のいて。小さくなったその音が、記憶の音と混ざり合う。