「君たちが昨日食べた学食に、記憶削除の脳薬が混ぜられていた」
 いつもハツラツとした雰囲気で、学生と変わりない若さを発揮している男性教師の野尻先生が、教卓の前で顔を真っ白にしている。
 これは、現実世界の話だろうか?
 野尻先生の言葉に、教室内は水を打ったようになった直後、すぐにざわつき始める。私もまだ言われた意味を理解できず、どこか他人事のように聞いていた。
 「薬が混入していたのは、味噌汁の中だ。学食の汁物は全メニュー共通して出されていたから、一口でも飲んだのなら……、被害の対象になる」
 野尻先生の言葉で昨日の学食を思い出すと、たしかにメニューに味噌汁があった。ゾワッと神経が逆立ち悪寒が走ったので、思わず両腕を反射的にさする。
 辺りを見渡すと、皆同じように青い顔をして、両手で腹部を押さえたり頭を抱えたりしていた。
 「待ってください……、いったい、誰がどうしてそんなことをしたんですか? 私たちはどうなるんですか?」
 黒いロングヘアが特徴的で、クラスの委員長を務めている友人の有里(ゆうり)が、隣の席を立ちあがり震えた声で疑問を投げかけた。
 「教師の中に疑わしい人物があがっているが、現在捜査中だ……」
 「え……?」
 教師の中に犯人が……? 衝撃的な告白に、思考が停止する。
 何人かの生徒は悲鳴を上げて、大きなショックを受けていた。
 野尻先生自身も、まだ受け止めきれないという様子で唇を震わせている。
 「症状としては……、直近十年間の記憶が消える可能性が高い。動機は今調査中だが、今日の夕方にもニュースになるだろう……」
 そこまで聞いたところで、最後列の席にいた別の女子生徒が「十年⁉」と大きな声を出して勢い良く立ち上がった。
 普段は一匹狼のような雰囲気で、学校に来たり来なかったりを繰り返しているウルフカットが特徴的な彼女――黒木千枝(くろきちえ)が、全員の視線を集めながら、みるみるうちに怒りや不安を表情に滲ませていく。「十年分の記憶が消えるって……なにもなくなるってことですか⁉ 八歳から今までの記憶まで……全部……?」
 「いや、学習に関する記憶には影響がないようだ。ただ、そのほかのことについては、まだ不明な点が多い」
 「そんな……十年って……」
 黒木さんは、絶望した様子でそのままストンと座り込んだ。
 「記憶が消えるのは、ちょうど一ヶ月後。それまでは症状は出ないようだ。昨日服薬したということはつまり、君たちは卒業式の翌日に記憶を失うことになる」野尻先生は、歯を食いしばりながら気まずそうに情報を付け足す。
 その話を受けて、再び隣の席の有里が挙手をして前を見据えた。
 「じゃあ卒業したら、皆のことを二度と思い出せなくなるってことですか?」
 「そういう、ことだ……」
 「嘘ですよね……?」
 有里はほとんど泣きそうな声で問いかけ、肩を震わせた。その涙は教室内の心配を煽り、生徒たちの不安を一気に増幅させた。
 今までショック過ぎて黙っていた生徒たちが、泣きながらパニックになり始める。
 「皆のこと忘れるって……そんなの嫌なんですけど!」
 「治る薬はあるんですよね⁉」
 「十年分の記憶を失うって、最初から人生やり直すようなもんじゃないですか!」
 「誰がどう責任取るんですか?」
 混沌とした教室の中で、私はただひとり、黙って俯く。
 これで私は、ずっと自分を飲み込んでいた自己嫌悪の闇から、逃れられるかもしれない――。
 一瞬、そんな考えが頭の中をよぎって、すぐに消えた。
 どこまでも弱くずるい自分に嫌気がさして、瞬時に首を横に振って正気を保つ。
 冷静になるために再びあたりを見渡すと、自分と同じように落ち着いた様子の生徒が、窓際にひとりいることに気づいた。
 学年で一番成績優秀な生徒――久我山映(くがやまえい)だ。
 彼は頬杖をつきながら、一切顔色を変えずに前を見据えていた。
 真っ黒な前髪は少し長めで、半月型の薄茶色の瞳をほとんど隠してしまっている。長いまつ毛は上を向くことなくスーッと目尻に向かって下に下がっていて、それが余計に彼のアンニュイな雰囲気を強めていた。頬を支えている指は細く長く、鼻も当然のように高いので、まるで絵画のように美しい横顔をしている。
 その美しさと気だるげな雰囲気で、密かにファンが多いと噂の久我山君とは、思考が読めず近寄りがたいので一度も話したことがない。
 そして今も、彼が何を考えているのかまったく想像がつかない。
 もしかしたら……、私と同じように、記憶を消してもらった方が都合のいいことがあるのだろうか。
 そんなことを思いながら、私はひとまずスマホをブレザーのポケットから取り出した。
 【お母さん私、記憶なくなっちゃうかも】
 取り急ぎ送ったメッセージはすぐに既読がつき、【どういうこと?】という言葉と共に首を捻った猫のスタンプが送られてきた。

 ◯

 一ヶ月後に控えた卒業式の翌日に、十年分の記憶が無くなる。
 それはつまり、自分は知らない自分が、十年分存在してしまうということだ。
 改めて考えたらすごく怖いことで、昨夜はあまり寝られなかった。
 今回の事件は今朝の新聞で大きく取り上げられ、ますます現実味が感じられない状況になっていた。
 〝集団記憶喪失事件〟とタグ付けされたニュースは、同世代の高校生たちにも大きな衝撃を与えたらしく、SNSで次々に拡散されていた。
 学食を食べていたかどうかに関わらず、全学年の保護者たちは急遽説明会に呼ばれ、校長から事態を説明されたけれど、ひとりの保護者が暴れて乱闘騒ぎになってしまったらしい。
 父親と母親は、必死に私のことを慰めてくれたけれど、心のどこかでは、別の人生を歩めるかもしれないと思っているなんて、とても言えなかった。
 「深青(みお)おはよう。……親、どんな反応だった?」
 私の後に登校してきた有里が、リュックを机に置きながら不安げに問いかけてきた。
 三年生になって初めて彼女と同じクラスになったけれど、隣の席になったときから人懐こく話しかけてくれたので、すぐに仲良くなった。
 「母親は……、号泣してたよ」
 「普通そうだよね。うちの母親は、真っ先に大学進学のこと心配してたよ」呆れたような口調で話しながら着席する有里。
 都内にある医大に進学が決まっている有里は、家族全員医者の家系らしい。
 有里は昨日起きたこと、親の反応、周りの人の反応をひととおり教えてくれて、すべて話し切ってからひとつ大きなため息をついた。
 それから、じっと私の瞳を見つめる。
 「深青は……記憶がなくなるかもって知ったとき、一番に誰のことを思い浮かべた?」
 「え……」
 「私はね、悔しいけど陽太だったの」
 眉をハの字に下げて、有里はひとりごとのようにつぶやく。
 陽太……加西君とは、サッカー部の部長を務めるスポーツ万能な生徒だ。そして、サッカー部マネージャーを務めていた有里の彼氏でもある。
 別れるかどうか微妙な空気感であることを以前から少し聞いていたけれど、まさかこんな事態になるとは思ってもみなかったのだろう。
 自然に忘れることと、強制的に記憶を削除されることでは、全く意味合いが違う。有里が戸惑うのも当然だ。
 
 記憶が削除されると知ったとき、一番に誰のことを思い浮かべたか。私の答えは明
 確だった。
 私は真っ先に、もうこの世にはいない〝彼女〟のことを思い出した。
 決して忘れてはならない、彼女と過ごした日々のことを。
 「有里ー、後輩が呼んでるよー」
 「あ、はーい」
 教室の入り口付近にいたクラスメイトが、有里の名前を読んだ。
 廊下にいる後輩を見つけた有里は「マネの後輩だ」と言って、席を立った。
 ひとりになると、有里に問いかけられた質問が、遅れて頭の中を駆け巡る。
 親指を握りしめた自分の手を眺めながら、私は過去のことを思い出していた。
 かつて親友だった同い年の彼女――虹奈は、今の私の状況を知ったらどう思うのだろう。
 そっと目を閉じる。最後に会ったときの虹奈の姿が、鮮明に瞼の裏に映し出されて、私になにかを訴えようとしている。
 虹奈。あなたとの悲しい過去から逃げられると……、一瞬でも思ってしまった私を、見抜いているの?
 私は、どこまでもずるく弱い人間だ。生まれ変わってもあなたに会いに行くことは、きっと許されないだろう。
 「浅羽」
 闇の中に引きずり込まれそうになっていたそのとき、聞き慣れない低い声が、上から突然降ってきた。
 ハッとして顔を上げると、そこには、久我山映が立っていた。
 「気づいたんだけど、卒アル委員の仕事、来週までじゃない?」
 「え……」
 完全に頭が真っ白になっている私に、久我山君は淡々と告げた。
 彼の唐突なその声かけは、ぐちゃぐちゃになりかけていた私の思考を、一瞬で強制的にリセットしたのだった。

 〇

 卒アル委員になっていたことなど、とうに忘れていた。
 言い訳にしたら怒られるかもしれないけれど、受験勉強が忙しくてそれどころではなかったのだ。
 三年生になってすぐのホームルームで、あまりもの同士で決まったときのことをうっすら覚えてはいるけれど……。
 「あ……、久我山君、こっち」
 衝撃的な事件が起きてから三日目。
 私たちは、さっそく今日から、埃っぽい資材室で毎放課後集まることになった。
 奥まった場所に着席したまま頭を下げると、ちょうど今やってきた久我山君も頭を下げる。
 彼とだから気まずいというよりも、単純に人見知りだからこのはじめましての空気感がツラい。
 ……いや、はじめましてではないのだけれど。
 視線の置き場に困った私は、教卓に置いてある埃被った地球儀を見たり、ガラス棚の中に入っている謎の実験用具を眺めたりしている。どう見たって挙動不審だ。
 私と違って落ち着いた様子で、長机の斜め向かいに座った久我山君は、早々にノートパソコンを立ち上げた。
 「とりあえずノーパソ借りてきた」
 「うわ……、助かる。ありがとう」「野尻にまだやってなかったのかって驚かれたけど」
 「いや、そうだよね……」
 ハハ、と思い切り苦笑が漏れる。
 私は肩を縮めて、マウスに置かれた久我山君の長い指に視線を移動させた。
 「あのさ……思ってること言っていい?」
 爪の形まで綺麗だとか、そんなどうでもいいことを思っていたら、久我山君が急に口を開いた。
 ドキッとしつつも、すぐに「どうぞ」と返すと、久我山君は頬杖を突きながらゆっくりこちらを見てくる。
 「記憶が消えるこの状況で、アルバム委員ってさあ……」
 久我山君はこちらの様子をうかがうように、そこで一度言葉を区切る。
 どうしよう。その言葉の続きが、簡単に予想できてしまう。
 「……やる意味なくない?」
 「そう、それ」
 待ちきれず久我山君の言葉を予測して先に答えると、久我山君は真顔で頷いた。
 ぶっちゃけた話をしてくれたことで、少しだけ空気が和む。
 「だって、アルバムが届いたときには全員誰?ってなってるんだよな? 謎すぎるわ」
 「え……、たしかにね」
 「懐かしいとか一切思わない卒業アルバム、新しい」その発言に思わず、少しふふっとなってしまった。
 この人、思っていたよりも、話しやすいかもしれない。
 久我山君も緊張が解けたのか、少しだけ目を細めてこっちを見ている。
 「まずは全体感、確認するか」
 作成手順のプリントを横に置きながら、久我山君はワードを開いた。
 少しだけやる気が出てきた私も、プリントの内容を改めて確認する。
 「私たちはクラスページの構成を考えればいいだけなんだよね。写真を選んで貼り付けたり……。卒アル自体は、卒業後の六月納品なんだっけ?」
 「そうそう。卒業式の写真を入れるから卒業後にできあがる。データ提出は来週金曜まで。……これ間に合うのか? 全然分からん」
 日程を確認して渋い顔をする久我山君に、私はすべて正直に打ち明けようと思った。
 「……ごめん。これは完全に言い訳なんだけど、受験が後期まであったから終わった
 の本当に最近で、卒アル委員のことなんか頭にかけらも残ってなかった……」「そりゃそうだろ。そもそもこんなこと受験期の生徒にやらせるのがおかしい」
 久我山君はカタカタとパソコンをいじって、一般的な卒業アルバムの構成を調べ始めた。
 その様子を見て、仕事ができる人が相方で助かった……と密かに安堵する。
 「幼少期の頃の写真切り貼りしたりとかも、あるらしい」
 「え……、間に合うかな」
 「無理だな。よくあるアンケートで埋めるか」
 「そっちの方がまだ現実味あるかなあ……。うわー、皆に申し訳ない……」間に合うか不安になってきて、思わず頭を抱えた。
 そんな私とは反対に、久我山君はどっしりと構えている。
 「いいんだよ、誰もやりたがらなかった係なんだからテキトーで。俺らに任せた連帯責任だろ」
 「そっか……そうかな」
 久我山君の荒っぽい考えに、少し救われる。
 繊細そうに見えるけれど、意外と大雑把な性格をしているのかもしれない。
 「じゃあアンケートの項目、どんなのにする?」
 問いかけると、久我山君はうーんと斜め先を見上げる。
 「記憶喪失にちなんで、忘れたくない思い出ベスト3とか」
 いきなりブラックジョークをかます久我山君に、私は思わず吹いてしまった。
 まだ現実味がないからこんな風に冗談を言えるのかもしれないけれど、こんな嘘みたいな事件、笑ってないと乗り越えられない。
 「この学校での、忘れたくない思い出かあ……。あんまりないな」
 久我山君の冗談に気が緩んで、思わず本音が漏れてしまい、すぐにハッとした。
 どうしよう、こんなこと言われても反応に困るよね。
 焦った私は、すぐに訂正しようと、頭の中に言い訳の言葉を並べた。
 「ごめん、深い意味はないんだけど……」
 「俺も」
 しかし、久我山君はすぐに私のフォローを遮り、力強く共感してきた。
 「俺も、人生でひとつしかない」
 私を見つめながら、真っ直ぐな瞳で、ひとつしかないと言い切った久我山君に、なぜだかドキッとする。
 どこか厭世的な雰囲気を持っている彼がそんなことを言うだなんて、相当な出来事だったのだろう。
 久我山君が大切にするその過去を、私は一瞬、知りたいと思ってしまった。
 「浅羽は、記憶喪失になること、嬉しかった?」
 「え……」
 返す言葉を探していると、続けてそんなことを聞かれた。
 唐突すぎる問いかけにびっくりして、一瞬思考が停止してしまう。
 「なんか、思い出したくないことのほうが多いみたいに感じたから」
 すぐに親友の虹奈のことを思い浮かべた私は、表情筋が強張っていくのを感じた。
 虹奈とのことを思い出すと……、自分の胸の中に罪悪感でできた鉛が溜まっていくような感覚に陥る。
 どうして久我山君は突然、こんなに核心を突いてくるのだろう。
 ちゃんと話したのは今日が初めてなのに。
 でも、私は不思議と、久我山君になら話してもいいかという気持ちになっていた。
 「どうせ忘れるもんね、今話しても」
 「……そうだな」
 苦笑交じりの半ば投げやりなつぶやきに、少し切ない顔をする久我山君。
 私はひと呼吸置いて、自分の過去を頭の中で一度整理した。
 三年前のあの出来事は、口にするにはとても重たい過去だ。
 「幼馴染が亡くなったの。三年前の夏」一瞬、辺りがしんと静まり返った。
 これは誰にも話したことのない過去で、有里にも打ち明けたことはない。人前ではずっと蓋をして、開けてこなかった扉だ。
 久我山君は一瞬固まってから、「そうなんだ」と落ち着いた声で返した。
 予想通りの平坦な反応に、逆に安心する。
 「その子がいなくなってからずっと、私の人生も止まってるような感覚なの。だからかな、高校でも、人にあんまり関わらなくていいやって思って……思い出もそんなにないんだ。雑談できる相手は、有里くらい」
 「……そっか」
 「今回の事件があって、真っ先にその子のことを思いだした。忘れたらこの後悔や悲しみから逃れられるかもしれないとも思った」
 そこまで吐き出して、私は口をつぐんだ。久我山君が、あまりに真剣に静かに頷いてくれるから、つい話し過ぎてしまった。こんなに自分の本音を誰かに語ったのは、親も含めて初めてのことだ。
 「十年分の記憶がなくなるって言うけど」
 しばらく沈黙が流れたあとに、久我山君がゆっくり口を開いた。私は黙ってその言葉の続きを待つ。
 「十年ってさ、普通に俺らからしたら人生の半分以上なんだよな」
 「……確かに」
 「それってさ、もう別人だよな。自分の半分以上を失ったら」人生の半分の記憶を失ったら、それはもう別人。
 そうか。まだ想像がつかないけれど、そう言われるとそんな気がしてくる。
 「久我山君は……」
 「映でいい」
 「映は、別人になりたい?」
 まっすぐ映のことを見つめながら問いかけると、彼は一瞬なにかを考えるような間を置いてから、「そうだな」とつぶやいて切なげに目を伏せた。
 いったい今、映の瞼の裏では、どんな過去が再生されているのか。
 まだ十代の若さだったら、忘れたくない大切な思い出ばかりであることが普通なん
 だろう。
 だって皆、教室内で友人と抱き合ったりして、あんなに涙を流していたから。
 でも映は……、私と同じように、過去を忘れたい気持ちも混在して持っているのかもしれない。
 たとえ別人になってしまったとしても、いいくらい。
 「私は……」
 しずかに話しだそうとしたその時、前方のドアがガラッと開く音が聞こえた。棚の隙間からドアを覗くと、男女二人がひっそりと入ってくる様子が見えた。
 ――有里と加西君だった。
 大事な会話が繰り広げられそうだとすぐに察した私は、「どうする?」という問いを瞳に滲ませて映を見つめる。
 映はこくんと頷いてから、後ろ側のドアを親指でくいっと指さした。
 そっと出よう、という合図だと受け取り、私と映は静かに荷物をまとめ外に出る準備をする。
 盗み聞きしてはいけないと思い、なるべく耳を傾けないように努力したけれど、ドアに手をかけたところギリギリで、有里のすすり泣く声が聞こえてきてしまった。「いやだ、私、陽太との思い出なくなるのなんて耐えられない……っ」
 さっきは教室で無理やり笑顔を作っていた有里が、こんなにも取り乱している。
 有里……。強がっていたけれど、やっぱり追いつめられていたんだね。
 友人の苦しそうな姿に、胸がギュッと絞られるような気持ちになる。
 誰にだってきっと、忘れたくない人はいる。皆、複雑な思いと必死に戦っているんだ。
 私と映は共に息を潜めて、資材室を後にした。