意識が飛んだ後、気がついたらもうすでに校外学習の最中だった。あの日から、どこに飛ぶかはわからないらしい。
ここは…。神社。
「みんなでおみくじひこっか!」
あぁ、この時、この瞬間か。手には。
『紫苑へ』
里雲の、字だ。
急いで封筒を開く。
「これ…。」
シオンの花だった。便箋には。

『あなたを忘れない、遠くの人を想う』

「シオンの…花言葉…」
何故あんな事になったのか、今でもわからない。わかるわけがない。想像も、つかない。
でも最期まで私を想ってくれていた—。
「あれ吉野行かないのー」
「あ、ごめん。今行く!」
このグループを抜けられることはないだろう。私は、どうすれば。
その時、私の耳に男子生徒の声が入ってきた。
「なんか鈴木おかしい」
それ…。
「それ、なんでですか」
「え…誰。」
「すいません。吉野です。とにかく、教えて欲しくて。」
「…なんか…鈴木が急に暗くて」
「今、急にですか」
「あ…はい」
行かなきゃ。
里雲を、私が、助けなきゃ。
神社にはまだ多くの生徒がいる。各々が自分の願いをこれでもかと絵馬に書いたり、手を合わせたり。
今なら、まだ―。
「里雲!里雲!」
神社の端から端まで走り回って里雲を探す。どこを見ても同じ高校の生徒で溢れている。その中に、一人。
「里雲!」
どこかの男子生徒が言っていたように、どこか暗くていつもと違う感じがした。
「絶対、朝を迎えてよ。」
「紫苑…?なんのこと…?」
「だから、絶対絶対。生きてよって。」
「…。」
「里雲…?約束。約束だからね。忘れないでよ。」
「それは………うん…。」
それは…?その言葉に続くものは何だったんだろう。だとしても里雲が明日、朝を迎えてくれさえすれば私は里雲を救える―。
里雲、忘れないでよ。シオンの花言葉みたいな人生を、送らないでよ。
約束だからね、里雲。