――――暫くして、現れたのは。

「やぁ、こんばんわー」
グレーの髪に羽っ毛のような茶色のたてがみを持つ青年であった。さらには犬でも猫でもない黒い耳に瞳、すらりとしたしっぽにえりもふを持っている。

「その……獣人……ですよね」
「ハイエナ獣人のグレイだ」

「ハイエナ……!もふもふなんだ……っ!」
襟もふっ!シェラちゃんみたいな襟もふっ!

「……そこなの?」
「そこ以外になにが!?」
ちびちゃんずのもふもふに癒され、今もなおたくさんのふわもふ、向かいにウサ耳しっぽのヨモギ先生!隣にはさらにもふもふオウギワシ獣人なセンさんまでいるのだ!

「いや、普通ハイエナって聞くと嫌なイメージ持たれるからさ」
席に回り込み、センさんとは逆隣に腰を下ろしたグレイさんがニカっと笑う。

「センさんの紹介なのに、嫌なイメージなんてないでしょ?」
「今会ったばかりだが」
と、センさん。
でも……。

「三つ子ちゃんぱぱだもの」
俺の膝とセンさんの膝をコロコロと行ったり来たりして遊んでいるかわいいちびちゃんず。センさんもグレイさんもいいひとじゃないわけがないと思うのだ。

「ふ……っ、そうか」
今、センさん、笑った……?なんだかとっても貴重なものを見た気が……?

「んー、気に入った。翻訳ツールの他にも色々と開発してやる」
「へ?」

「ステータス出してみ」
「はい……でもにほ……異世界の言葉ですよ?」
「構造は変わらん。ツールさえ入れてしまえば俺にも読めるようになる」
そう言うと、俺に続いて自分のステータスを開いたグレイさんが、忙しく作業し出す。


「翻訳ツールはオッケーだから……お前スキルたくさんあんじゃん。空間操作、気配隠とん、念話、バフ上昇……。えっと……ひ……つ……」
「あ、ツグツグでいいっす」
だからなんでヒロツグは言いづらいねんっ。

「ツグツグはスキル色々と持ってるから、マジックボックスもすぐに作れる」
そうなの……?絵本とかおもちゃをしまっておけるだろうか。あと……着替えとかあるといいかも。

「電子財布も入れとこう。電子マネーを使える。通信と通話はこのボタンから元々使える」
「そんなボタンが……」
言われるまで気が付かなかった。ずっとそこにあったはずなのに。

「図鑑や地図も引き出せるから、自由に使いな」
「ありがとうございます……!」
グレイさんって……何者……?冒険者……なんだろうか。

「はにゃのせんせぇだよ?」
ふと、はにゃちゃんがじっとグレイさんを見上げていた。

「きりも」
「ようも!」
そして全員もれなく!

「とりゃぁしねぇよ。俺には俺で、天使がいるからな」
「天使……」
「一応娘がな。会った時はよろしくな。ギルドの託児所にも預けてるから」
「それは……ぜひ」
スペースやくみは違うだろうけど。グレイさんと同じく襟もふもふな子だろうか。でもちびちゃんだもの。絶対かわいいよね。

「因みにこのスキル……経験値アップ、入れとく」
「いや、使わないと思いますけど……」
レベル、上がりにくいだろうし。

「でもレベル1はなぁ?」
う゛……っ。さすがにそれは……ヤバイか……?

「明日から走るか」
「え?」
はい!?

「まぁ……その……走るくらいなら」
体力はあった方が……駆けっことかで役に立つかも。

――――それに。

食事処のメニューが……読めるようになってる。

明日は、絵本読んであげられるから、楽しみだ。