さて、お昼寝の後のおやつタイムや自由遊びの時間を終えれば、親御さんが迎えにくる時間がやってきた。
その、前に。
「どーも」
「あ、ラン先生~~」
ヨモギ先生が手を振ったのは、オリーブグリーンの毛並みに狼耳しっぽの高身長の男性である。
「ツグツグ先生、夜勤のラン先生ですよ。ラン先生、こちら新しく入ってくださったツグツグ先生です」
「……ふぅん……変わった名前だな」
「いえ、本名はヒロツグですけど」
「……っ」
「いや、呼びにくいならツグツグでいいです」
「ん」
こくんと頷くラン先生。やっぱりそこが謎すぎるっ!
「泊まりの子は、先にお泊まり用のお部屋に移動するんですよ」
あぁ……他の子のお迎え見ると……泣いちゃうもんな。
「ま、これから預かる子もいるが」
冒険者さんが利用する託児所ならではってことなんだな。
「今夜は?」
「急遽シェラちゃんがお泊まりですよ」
シェラちゃん……?
「本当はお迎えに来られる予定だったんですけど、急遽依頼が入ってしまったみたいで……」
「そう……なんですか……」
急にお泊まりってのは、きっとシェラちゃんも不安だろうな。
「おともだちもいるから、心配ない」
ラン先生はやっぱりなれているのかな。みんなとばいばいするシェラちゃんを難なく回収してくる。
それに……同じくお泊まりのおともだちもいるなら、寂しくないかな。
「シェラちゃん、いいこでね」
なでなで。
「せんせぇ」
「……ん?シェラちゃんのほっぺ、ちょっと赤い……?」
「無自覚か」
「そうなんですよ」
いや、ちょ……ラン先生もヨモギ先生も、何のことだろう……?
「そう言うんでねぇから、平気」
と、ラン先生。それなら……大丈夫かな……?シェラちゃんにばいばいしながら別れれば、ちらほらと親御さんが迎えにくる。
「あ、ツグツグ先生、イオくんぱぱ来ましたよ~~」
「は~~い」
イオくんを連れて引き渡しに行けば……。
ふぐおおおぉぉぉっ!まさに……ザ・コンドルうぅぅっ!この世界の鳥獣人。まさにちびちゃんそのままおっきくしたもふもふぅっ!
そしてイオくんぱぱは……何かどっかの軍人さんのようにかっけぇっ!!
えと……冒険者……だよね?
「うむ、新しい先生か」
「ツグツグです」
もう何かツグツグでいいような気がしてきた。
イオくんを抱っこしたイオくんぱぱは、うむと頷く。
「私はイオのぱぱのブレイブだ。近衛騎士団長をしている。よろしく頼む」
え……?近衛騎士団長……って……冒険者だっけ……?いや……違うよね……?
「妻が冒険者なので、こちらを利用している」
「あ……そう言う……っ!」
片親が冒険者だったり、ギルド職員だったりすると利用できるんだったもんね。
「こんにちわー」
「あら、新しい先生?」
次にやってきたのは……分かる……!確実に分かる!ひとりはふくろう三つ子ちゃんままと、オーストラリアガマグチヨダカ三つ子ちゃんのままである!!
ちびちゃんたちと同じ鳥目の獣人のようである。
「うちの子たちがどうも~~」
「よろしくね~~」
わぁ、ほわんほわんしてる上に……おふたりも……もっふもふ。
「ほーほー」
「ぎゅー」
「ぱぱは?」
ふくろう三つ子ちゃんずはままに早速ぎゅむーしにいってかわいいのなんの。
「ぱぱはクエストの達成報告よ。このまま会いに行きましょ」
冒険者ギルドの託児所ならでは。クエストの達成報告中にお迎えと言うパターンもあるのか……!
そして一方でオーストラリアガマグチヨダカちゃんずは……。
「ちゅきっ」
「ちゅきっ」
「ちゅきっ」
ぎゃーっ!?俺の足元でまたかわいい嘴つんつんしてるんだけどーっ!?
「あら、先生のこと大好きになったのねぇ」
「あ、あはは」
「それじゃぁ、また後でねぇ」
ん……?また後で……?
――――とは言え……最後は渋々ながらままと一緒にばいばいしてくれたけど。ふぅ……俺も別れがたいなぁ。だってあんなにかわいいんだもの。