異世界召喚するなら、もうちょっと若ければ良かった。

ほんと、言われまくったけども、10代は10代でどうなんだとも思う。

でも20代だと20代でどうせ育たないと、王城から捨てられるとは思わなんだ。

「ギルド預かりと言われても……ねぇ?どうしたらいいと思う?」
「……いや、俺に聞かないでください」
王城からギルドにぽいっと捨てられた俺は、王城からの手紙を差し出しギルマスだと言う男性の前に座らされていた。

「召喚される勇者や聖女は決まってヒト族だ」
まぁ、地球から召喚されるんだ。オオカミ男とかがいたらビックリだよな。
そしてギルマスもヒト族だ。

「でもヒト族は数多くある種族の中で最弱なわけだ」
「王城も獣人だらけでしたね」

「そう言うこと。国のトップも獣人だし、獣人も種類によるけど、身体能力が優れているからね。あと、ヒト族に比べて強くなる。だから、勇者や聖女がヒト族でも強くなるってのは、本当にヒト族ではまれなこと。しかしながら、10代から鍛えないとどうにもね。前例は少ないとはいえ今までもずっとそうだったらしいし」

「ほかの10代以外の召喚者はどうなったんですか?」
「就職……かな?でも下働きとかばかりだよ。ヒト族はやっぱり……最弱だからね」
「それでどうして俺がギルドに……」
「職の斡旋を押し付けられたね、こりゃ」
「……はぁ……」

「冒険者になってもいいけど……一応ジョブは勇者でしょ?」
「まぁ一応ですが」

「20代すぎると……レベルって上がりにくくなるんだ。脂肪だけがたまっていく」
「いや、何の話ですか、脂肪がたまっていくのはダイエットの話でしょ?」
確かに年齢が上がるにつれて脂肪は落ちにくくなると聞く。
……が、この異世界ではレベルが上がりにくくなるらしい。

「今さら鍛えても……死ぬ確率の方が高いね。あと、獣人の方が仕事舞い込むから、あんまりヒト族の育成には力を入れてないんだ」
「あ、安全な仕事は……」

「募集かけとくよ。気長に待とうねぇ。なかなかないからさぁ」
そんな悠長な……。

「でもギルドで雑用してもいいよ。その代わりまかないと寝床は提供してあげる」
「そ……それはありがとうございます」

「じゃぁ決まりだねぇ。あ、そう言えば名前は?」
まぁ、城でも聞かれなかったしなぁ。

「ヒロツグです」
「じゃぁ、ツグツグ、早速雑用としてギルドロビーの掃除お願い」
いや、何その愛称!?
でも、こっちの世界のひとたちにとって、単純に呼びにくいだけかも知れないからな。が、がまんがまん。

※※※

箒を片手にシャッシャッシャッ

冒険者ギルドの職員も、獣人やエルフ、あと竜人もいるようだ。冒険者はそれプラス魔族もいる。いや……魔族いんの?普通にギルドに……?じゃぁ一緒に召喚されていた少年少女たちは一体何を倒すんだろうか。……魔物?
でもま、魔王討伐とかなさそうで、それはそれで良かったのかも。

「ツグツグさーん、こっちもお願いしまーす」
「はーい」
ギルマスのせいで、ギルド職員さんからもツグツグと呼ばれるのだが。その……やっぱりそっちの方が呼びやすいのかな……?お掃除をしていれば、不意に足元にもふっとした感触が……。

もふっ

もふっ

もふもふに片足囲まれた――――っ!?ビクッとしながらも下を見れば……まんまる……もこもこが、3匹。

「あ!いた!オーストラリアガマグチヨタカちゃんたちー!」
走ってきたのはウサ耳獣人のお兄さん!?

いや、待って。今あのひと何つった!?お、オーストラリア!?何で異世界にオーストラリアってつく獣人がいるんだ!しかもこの子たち。

「ぴーよぴーよ、もふっ」
「がま()ちよ()か!」
「かんがるー、しょうっかんっ!」
いや、いくらオーストラリアでもカンガルー召喚はできないのでは!?

「あ、そこのひと、その三つ子ちゃんは……」
ウサ耳お兄さんが呼べば。

「もふあてがいあり、ごーかっく」
「はにゃとけっこんしゅゆ――――っ!」
「くかー、くかー、にゃむにゃむ、こけこっこー」
しれっと紅一点のコにプロポーズされましたが!?いやまぁ、ちびっ子にありがちな大人のお兄さんへの憧れだと思うけど!
こけこっこーは確実に違う鳥の鳴き声では!?

「鳥……?獣人……なの?」
「鳥っぽくても獣人ですよ。ペンギン論争により鳥っぽくても獣人と呼ばれることになってますから」
いや、何だよそのペンギン論争って!?

「むろん分類は鳥目なので、この子たちはオーストラリアガマグチヨタカちゃんですね」
「ほ……ほう?」

「ペンギン論争を知らないなんて……黒髪黒目ですし……あなたはさては、召喚者ですね?」
「えぇ……まぁ」
「ギルマスからは仕事が見つかるまで雑用だと」

「そう……ですね?」
「因みに、子どもたちの面倒をみるのは好きですか?」
「まぁ……地球でもしてましたからね」
保育士と幼稚園教諭の資格は持っている。

「なら、是非託児所所員やりませんか!?今人不足なんですよー」
「はいっ!?そりゃぁ……まぁ、いいですけど」

「わーい、わーい。ほーらみんな、新しいお兄さん先生だぞー。一緒に託児所戻ろうねぇ~」
ウサ耳獣人の青年が告げれば。

『抱っこぉー』
託児所に戻るのは、抱っこで限定らしい。